いつもと変わらない朝だ。
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リビングに降りていくと、母がトントントンと野菜を切っている音が聞こえてくる。
父はもう外に出かけているようだ。
洗面所に行くと、姉が髪を梳いていた。
「おはよ」
「・・・おはよ」
いつもと変わらない挨拶を交わし、いつもと同じように家を出た。
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だが・・・・・・。最近気になることがあるのだ。
同じ町内の同じブロックにいる幼馴染、ミユキの様子がおかしい。
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小さい頃から一緒によく遊んだ、初恋・・・といってもいい感情を抱いてる彼女。
そんな彼女が、ここ最近すっかりふさぎ込んでいる様子なのだ。
街で見かけても、ずっと俯いたように歩いていて、目も合わせてくれない。
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(たまには少し、会うことが出来ないかな?)
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俺は少し考えてから、コンビニに寄ってハーゲンダッツのチョコブラウニーを二つ手にすると、彼女の家に向かって歩き出した。
俺が初めてバイトで給料が入ったときに買ってやったら、滅茶苦茶喜んでいたアイスだ。
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(ミユキは憶えているだろうか?)
もしも憶えていなくても、俺にとっては特別なアイス。
これでもう一度、あの笑顔を見れないだろうか・・・・・・。
そんなことを考えながら歩いているうちに、彼女の家が見えてきた。
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久しぶりに訪れるミユキの家は、陽光に明るく照らされているが、心なしか陰気な感じを受けた。
インターホンを押してみたが、反応はない。みんな朝から出かけているのだろうか?
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(参ったな・・・・・・)
アポなしで訪れるのにはアイスは不向きだった。このままじゃすぐに溶けてしまうだろう。
俺は門扉を通り、石畳の向こうにある玄関扉まで進んだ。
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ためらいがちにノックするも、反応はない。ドアに手をかけてみると・・・、驚いたことに、鍵がかかっていない。
今のご時世、玄関の鍵をかけないなんて、不用心にもほどがある。
それとも、家の中に誰かいるのだろうか?
俺は家の中をそっと覗き込んだ
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「すいませーん」
声をかけたが、沈黙が帰ってくるだけだった。
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「誰かいませんかー?」
言いながら、内土間に入ってみる。
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小学校低学年の頃は勝手に上がり込んだりしたものだが、さすがにこの年では気が引ける。
(でも・・・・・・)
俺は片手に持ったハーゲンダッツの箱に目をやった。
(手土産にアイスはまずかったな。このままじゃすぐに溶けてしまう。)
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・・・・・・5分だ。5分だけ待たせてもらおう。
俺は自分にそう言い聞かせると、そっと玄関の上がり框に足をかけた。
応接間とリビングの脇を通り、お婆ちゃんが住んでいたという和室の隣にある階段に向かう。
ギシギシという廊下の床の音が響く。
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(誰かこの音で来てしまうんじゃないだろうか?)
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この家に人を訪ねてきたというのに、おかしな考えが浮かぶ。
階段からホールを通り、左手の部屋が目指す彼女の部屋だ。
勝手に侵入しているという罪悪感から、ためらいがちにドアをノックしてみるが、返事はない。
そっとドアの隙間からのぞいてみるが、人の気配はなかった、
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久しぶりに見るミユキの部屋は、小学生のころと比べると幾分とさっぱりしていて、ものが少なくなったような印象だが、以前からあったおおきな熊のプーさんのぬいぐるみや、ジャニーズのうちわなどは相変わらず飾ってあって、ここがミユキの部屋であることを懐かしさと共に証明している。
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俺は自分の体が大きくなったせいか、少し手狭に感じる部屋の中に入った。
部屋のものを勝手に物色するわけにはいかないと思いつつ、つい色々と見て回ってしまう。
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と、ふと学習机の上にあるハードカバーが目に入った。
薄ピンクの表紙に、金字で「DIARY」の文字・・・・・・・・・
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・・・・・・日記帳だ。
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俺はためらいながらその日記帳を手に取ると、中をそっと読んでみた。
最初の頃のページにはたわいのない話が書かれている。
友達との遊び、見た映画の感想、部活の大会の成績、指数・対数関数が分からない等々・・・・・・。
(あいつ、テストの成績良かったのに、そんな悩みを抱えていたんだな。)
俺のハーゲンダッツの事らしい話もあって、どきりとした。あの時彼女が喜んだのは、演技じゃなかったらしい
ちょっとだけ照れながら、ページを進めていく。
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と、ある時を境に彼女の雰囲気が変わっていた。
「現実を受け入れられない」「心に穴が開いたよう」「何もできない。何も手につかない」・・・・・・。
そんな言葉ばかりで、筆致も乱れている
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(ミユキの身に、なにかあった)
そう確信させるものがあったが、実際に何があったのか、はっきりと書かれていない。
○○心療内科、という文字がちらちらと出始めた。メンタルヘルスに通い始めたようだ。
精神的に深刻なダメージを負っているのは間違いない。
日記帳の隅に、リタリン、コレミナール、バルビタールなどの文字が小さく書いてあるが、これって、うつ病や睡眠薬ではなかっただろうか?
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彼女はかなり追い詰められている。一体何があったんだ?
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俺は必死にページをめくり、ミユキの変化の理由を見つけようとした。
今から約2カ月前辺りから急激に日記の内容が変化していることまでは突き止めたのだが、それがなにによるものかは、どうしても特定できなかった。
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どれぐらい時間がたっただろうか?
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ふいに
shake
ゴトン!
という音がして、俺は口から心臓が飛び出しそうになった。
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階下だ。誰かいる。
夢中になっている間に、誰か帰って来たのだろうか?
ヤバイ!しまった!!
どうしよう。どこかに隠れるか?
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俺は周りを見渡した。クローゼットの中、ベッドの下、窓の外のバルコニー・・・いろいろ可能性を考えてみる。
だが、
(どこに隠れていたって無駄だ。ミユキだったらそのうちこの部屋にも上がってくるだろう)
俺は思い直すと、そっとホールに顔を覗き込ませた。
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人の姿はない。俺は音を立てないように、ゆっくりと階段に向かって歩みを進めてみる。
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誰か帰って来たとして、そのままリビングにいてくれれば、うまくいけば鉢合わせずに外に出られるかもしれない。
俺は壁に手をついて、軋まないように、祈るような気持ちで階段を降りる。
階段の中ほどから、1階のホールが見えてくる。
・・・・・・誰の姿も見えない。
このままいけるか?
俺は周囲の気配を伺いながら、1歩ずつ歩みを進めた。
身を隠す場所はない。今誰かがホールにいたら終わりだ。
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・・・相変わらず人の姿はない。ひょっとして、帰宅したばかりでトイレにでも入っているのかもしれない。
今がチャンスだ。
俺は思い切って玄関に向かって歩き出した。
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と、俺はとんでもないことを思い出した。
2階にハーゲンダッツを忘れてきてしまったのだ。
俺は思わず2階の階段を振り返った。
取りに戻るか、このまま行くか。
俺が一瞬躊躇した、ちょうどその時だった。
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shake
ガタン!
音が聞こえた。
俺の視線の先、階段・・・の隣の、和室の中からだった。
カタ・・・カタカタカタカタカタカタカタ・・・・・・
俺は自分の目を疑った。
和室の中、床の間に並んで、仏間になっているのだが、その中の仏壇が独りでに揺れていた。
仏壇の前には、恐らく供えられていたであろう、お焼香や香炉が転がっており、畳に灰が弧を描いていた。
先ほどの音はこれらが転がり落ちた音だろう。
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キン、キン!!
と、仏壇の閂が回転した。辺りに鋭い金属音が響く。
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(ヤバイ。ここにいてはいけない。早く逃げ出さなければ、早く!)
そう思いながらも、まるで金縛りにでもあったみたいに体が動かない。
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ギ、ギ、ギイイイイイイイイイイイ・・・・・・
重たげな音を立てながら、ゆっくりと仏壇の扉が開く、と同時に、強烈な異臭が俺の鼻を突いた。
酸っぱいような、それでいて甘いような、腐敗臭とも違う、不吉で不快な臭い・・・・・・。
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死臭・・・
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俺がその言葉に思い当たった時、仏壇の奥からゆっくりと白い何かが這い出てきた。
青白い中に赤紫の斑点が虫食いのように浮かび上がるそれは、どうやら人の手のようだった。
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もぞもぞと、指を蚯蚓のように蠢かせ、仏壇の端をつかむと、その奥から、黒い紐の塊のような球体が姿を現した。
紐のように見えるのは、女性の髪の毛だった。
乱れ、絡まったその隙間から、黄濁した瞳がどろんとこちらを・・・俺の目を見据えた。
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「う、うわ、うわ」
情けない声がカラカラに乾いた俺の喉を突いた。
女と目が合った瞬間、俺は反射的に逃げ出そうとしたが、その場にへたり込んでしまった。
腰が抜けてしまったらしかった。
ギイイイ・・・
と扉を軋ませながら、女がゆっくりと仏壇から全身の姿を現した。
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皺が深く刻まれた肌は、女が老婆とでもいうべき年代であることを示していた。
死装束、というのだろうか。元は純白であったろう、やや黄色に変色した経帷子に身を包み、硬直した顔面から表情という物が欠落した顔でこちらをみるその姿は、およそこの世のものではない。
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ズリ・・・ズリ・・・・・・ズリズリ・・・
仏壇から抜け出た老婆は、ゆっくりと、だが確実に、俺に向かって揺らめくように進んでくる。
老婆が近づくにつれ、立ち込める死臭がさらに耐え難いものになっていく。
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(この家は死者が棲む家になっていたんだ)
俺は後ろ手にもがくように、玄関に向かってずりずりと進んだ。
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一刻も早くこの家から出なければ、そう思いながらも俺の目は落ちくぼんだ老婆の眼窩から離すことはできなかった。
オオ・・・オオオオオオオオオオ・・・
洞窟に響く風のような虚ろな音を口から吐き出しながら、老婆は俺との距離を徐々に詰めてくる。
ドタドタと俺の手足がむなしく廊下を掻き毟る中、もう今にも老婆の腐りかけた斑点だらけの腕が俺の足をつかもうとしていた。
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と、
ガチャ、ガチャガチャ
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金属音が玄関から響いた。
振り返ると、玄関ドアの型板ガラスの向こうに、人影が見える。
誰か帰って来たのだ。
カチャン、キイイ
玄関ドアを開けて入って来た人影に、俺は自分の目が自然に見開かれているのを感じた。
ミユキだ。
何という事だ。なんてタイミングで帰って来たんだ。
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「逃げろ!」
俺が声を出すより早く、
shake
ガッ!
俺の側頭部が、なにかに掴まれた。氷に触れたような冷気が伝わってくる。
と、抗いようのない凄い力で俺の頭が捻じ曲げられた。
強制的に、俺の視界からミユキの姿が消える。
代わりに目に飛び込んできたのは、俺を飲み込もうとするような大口を開けた老婆の顔だった。
「う、うわわわわああああ」
「オオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ………………」
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俺の叫びを無視して、老婆がうなり声のような音を出した。
まるで洞窟のうろに響く風音のような空虚な音だった。
と共に、老婆の口から黄色い、硫黄の塊のような気体の塊が俺に向かって漂ってきた。
気体は俺の口を狙うように、ゆっくりと漂ってくる。
得体のしれない気体を吸い込んでしまう生理的な嫌悪感が先に立ち、俺は激しく首を振ろうとしたが、どこにそんな力があるのか、老婆の手は俺の頭を万力で締め付けたかのように動かさない。
どころか、俺の口を強引にねじ開けた。
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「ん、ん、んんんー!」
声にならない叫びをあげた瞬間、黄色い気体が俺の口の中から体内になだれ込んできた。
「う、うげ、うげえええええ」
生ぬるい汚水でも飲み込んだかのような強烈な不快感で、俺はその場に嘔吐しようとしたが、気体は俺の体に吸収されたかのようで、喉からは何も出ない。
「・・・・・・え?」
前方から声がする。ミユキだ。
「ミ・・・ミユ・・・キ・・・、逃げ・・・逃げ・・・・・・」
絞り出すように声を出すが、うまく言葉が出ない。
「え?どうして?どうして?・・・ジュンイチ、君?」
「ミユキ、逃げるんだ、ここにいたら、危ない」
俺はやっとのことで言葉を紡ぎだした。
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と、次の瞬間、意外なことが起こった。
ミユキが突然顔に手をやって、泣きだしたのだ。
「・・・・・・え?」
次に面食らったのは俺だった。
ミユキは肩を震わせて嗚咽を続けている。
「え?・・・どう・・・・・・」
「ごめんね・・・。ありが・・・とうね。おば、お婆ちゃんだよね。わた・・・っがお願いした・・・から」
「なに?・・・なにが、どうなって・・・?」
「ありがとう。ジュンイチ君、最後にあなたに会えてよかった。だって、もうすぐ会えなくなるから」
「最後?最後って・・・?」
混乱する俺に、ミユキはまるで叫ぶように告げた。
「今日が最後の日、49日の法要の日。あなたはもうこの世の人じゃないの。
あなたはもう、
shake
もう死んじゃったのよ!」
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「な、なにを言ってるんだ?」
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「あの日、あなたの家が火事で焼け落ちた日、あの日以来、私は現実を受け入れられなかった、なにも手につかなくって、何もできなくなっちゃった」
『現実を受け入れられない』
『心に穴が開いたよう』
『何もできない。何も手につかない』
・・・日記の中の言葉が俺の頭に浮かぶ。
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「何度もあなたを呼んだ。幽霊でいいから、夢の中でもいいからって、でも駄目だった。
病院にも通った、お薬も飲んだ。でも駄目、何も変わらなかった」
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ブス・・・ブス・・・・・・
小さな音が聞こえてきた。
俺の指先から、煙が上がっている。小さく、だが確実に、俺の体を蝕んでいく。
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「亡くなったお婆ちゃんにもお願いしたの。もしもあなたに会えたら、どうか私に会いに来てくれるように言ってって」
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俺の体が煙に包まれていく、忘れていた・・・。消し去ったはずの記憶がよみがえってくる。
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いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない日常。
深夜の異音。
むっとする熱気。
つかない電気。
鼻を衝く異臭。犬の鳴き声。
熱を持つ床。呼吸を妨げる煙。倒れる本棚。
触れないほど熱いドアノブ、黒煙に埋め尽くされた廊下、蛇のような炎。揺らめく視界。
喉を烙く煙、耐え難い熱風。
遠のく意識。めくれ上がる皮膚。
姉の叫び声、誰かが走り回る音。
ガラスの割れる音、視界を真っ赤に染める炎の渦、爆風。
倒れる母の姿。俺を助けようとする父。
さし伸ばされた手、もがき苦しむ手、痙攣する手、動かなくなる手、炭化する手。
壁紙の焼ける臭い、髪の焼ける臭い、皮膚の焼ける臭い、肉の焼ける臭い・・・。
断末魔の声、無念の表情、木材のはぜる音、眼球のはぜる音、
白い煙、黒い煙、その先にある赤い、紅い、赫い、アカイ・・・・・・・・・
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「うわああああああああああああああああああああああ!!」
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俺の体は全身が燃え広がり、グズグズと崩れだしていた。
そう、俺は死んだのだ。約2カ月前のあの日、深夜の火事に巻き込まれて・・・。
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いつもと変わらない日常、それはただ実態を持たなくなった身が、ただ自分の死を認めないために繰り返す、空虚な日常の抜け殻だったのだ。
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「あああああああああ!」
俺は無意識にミユキに向かって手を伸ばした。
ミユキも醜い俺の手をつかもうと、俺に手を差し伸べてきた。
だが二人の手が触れ合う前に、俺の意識は、再び混沌の闇に沈んでいった。
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「そばに、いたいよ」
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そんな言葉が、かすかに俺の意識の残り香に引っかかった気がした。
・
・
・
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俺の意識はどこかを彷徨っていた。
時間の感覚も場所の感覚もなにもない空間だった。
どれぐらいそうしていたのかはわからない。
いつしか、俺は誰かに手を取られ、どこかに向かって漂っていった。
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どうやらどこかに到着したらしく、どれぐらいかぶりに目を開けてみると、そこには霧のように淡く輝きながら流れる川のようなところだった。
川の向こう側には、先にたどり着いていたらしい父が、煙草をくわえながら立っていた。
と、霧に揺らめきながら、姉と母も現れた。
皆、炎にまかれる前の、いつもの服を着ているが、光に包まれているせいか、少しきれいに見えた。
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俺もそっちに行けば皆みたいになれるかな?
俺は焼き尽くされ、骨と炭の塊になった自分の姿をみて、少し恥ずかしくなった。
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この光の川に清められながら向こう岸まで渡れば、以前の姿に戻れるのだろう。
ふと傍らを見ると、ミユキの家であった老婆が、変色した白装束で、無表情に立っていた。
俺をここまで案内してくれたのは、彼女だろう。
俺は老婆に会釈をすると、光に向かって歩き始めた。
川に足を入れようとしたとき、
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(そばに、いたいよ)
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という言葉が、鈴の音のように俺の頭に響いた。
俺の足が止まった。
このまま進めば、俺は再び家族と共にいることが出来る。
だが・・・
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(あなたは、ミユキさんの守護をされているのですか?)
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俺は老婆に語り掛けた。
老婆は無表情のまま、黙して語らない。
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(魂は、死後もその位を上げることはできますか?)
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背後で、俺の家族が必死に俺を止めようとする気配を感じた。
俺の頭にためらいが浮かんだ。
このまま振り返り、家族と共にいられたらどれだけ幸せだろう。
だが・・・
肩を震わせて泣くミユキの姿が俺の脳裏に浮かんだ。
苦しむ彼女、初恋の彼女のたった一つの願い。
叶えたい。
俺も、彼女のそばにいたい。
俺は俯いた顔を上げた。
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(俺、彼女の守護をしたいです)
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俺は、老婆を・・・ミユキの祖母の顔をまっすぐに見つめた。
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(彼女のそばに、いたいです)
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冷徹な裁判官のような老婆の表情が、一瞬和らいだように感じた。
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俺たちは光のさす方に背を向け、再び闇と混沌に向かって進みだした。
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俺は家族と共に歩むことなく、老婆と共に現世に留まることを選んだ。
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その後、俺はミユキの守護者となって彼女と共にいることが出来たのか、
それとも、あの死者の棲む家の虜となり、老婆の傀儡となったのか、
はたまた永遠に混沌を彷徨い続ける浮遊者となり果てたのか・・・
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それはまた、別の話だ。
作者修行者
三題怪談、参加させていただきました。
三題怪談の題材
『日記帳』
『初恋』
『アイスクリーム』
参加者及び参加作品
よもつひらさか様 『イチゴアイス』
http://kowabana.jp/stories/28388
ろっこめ様 『追憶の君へ』
http://kowabana.jp/stories/28393
ろっこめ様 『秘め事』(二作目)
http://kowabana.jp/stories/28398
流れ人様 『彼女は壊れ、壊れた』
http://kowabana.jp/stories/28399
吉井様 『君の為に』
http://kowabana.jp/stories/28396
月舟様 『彼女の答え』
http://kowabana.jp/stories/28401
ロビンⓂ️様 『黒ノート』
http://kowabana.jp/stories/28407
フレール様 『過去と未来のノスタルジア』
http://kowabana.jp/stories/28410