*HANA*~ブーゲンビリア~

長編13
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*HANA*~ブーゲンビリア~

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金色に光る蝶が、静かに闇の中を飛んで行く。

優雅にヒラヒラと、夜の海を飛ぶ。

空と海の境目も見えない闇で、そこだけ一点、光る一艘の漁船の舳先にフワリと止まり、羽を休めた…

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(この辺で良いか…)

健斗は、船のエンジンを切り、籠にぐるりと引っ掛けた針の一つ一つに餌のサバを付け、全ての針に餌を付け終わると、籠の向こうに転がる、ローブで包まれたソレを引き摺って来た。

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マグロやカジキ用の太いテグスの一番下にソレの身体に巻き付けたロープをシッカリと結び付けた。

ソレは、ガムテープを貼られた口から言葉にならない叫び声を上げ、汗と涙と頭から流れる血でグチャグチャになった顔で…

健斗を虜にした、その美しい瞳で…

健斗を見詰め、何かを訴える。

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健斗はソレをロープごと引き寄せると、瞼に優しく口付け、次の瞬間、ソレを両手で抱え、海に放り込んだ。

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苦しい…

……

……

苦しい…

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真琴の身体は自らの意思をまるで無視し、海に深く深く沈んで行く。

後手に縛られた両手を外そうともがくが、海水を吸ったロープはより一層真琴の両手首に食い込み、どうやっても外す事が出来ない。

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鼻は容赦なく海水を吸い込み、今にも肺がパンクしそうになる。

せめて海面に顔を出そうと、ロープで縛られた両足で水をかこうとするが、足の先に付けられた重りがロープに食い込み、否応なしに深い海へ沈んで行く。

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健斗に殴られた頭からは血が流れ出ている。

何かが深い海の底から近付いて来る。

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静かな水圧を受けながら…

真琴の意識は、薄れ…

そして…

消えた…

……

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その日の海は時化ていた。

低気圧の前線が近くにあり、漁に出る事の出来ない健斗は、趣味のサーフィンを楽しんでいた。

漁に出られない時化の時は、子供の頃から慣れ親しんだ海でサーフィンをするのが健斗の楽しみの一つだった。

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いくつかの波に乗り、トライフィンのショートボードを小脇に抱え、健斗は海から上がって来た。

そして浜に脱ぎ捨ててあったTシャツを着込むと、サンダルの上に無造作に置いて有ったすでに生温くなった缶ビールを音を立てて開け、溢れ出る泡と共に渇いた喉に流し込む。

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『カッコいいですね!』

ふと、声を掛けられ振り返ると、長い髪を無造作にまとめ、ショートパンツを履いた綺麗な女の子が微笑みながら、健斗の隣に座るところだった。

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『サーフィン歴は長いんですか?』

女の子は、健斗の顔を覗き込む様に聞く。

『あ…うん。小学生の頃からだから、もう…20年以上経つかな…。』

健斗が答えると

『やっぱり!だって、ここにいるサーファーの中でダントツに上手いですもん!』

波間を漂うサーファー達を一通り眺めると、健斗に笑顔を向けた。

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後ろについていた手をバネにする様に立ち上がると、

『いつもこの海でサーフィンやってるんですか?』と、両手を背中で組むように伸びをし、健斗に聞くので

『いや。普段は漁師だから、凪てる時は漁に出てる。時化の時しか出来ないけどね!』健斗も笑顔で女の子に答えた。

『え〜!漁師さんなんだ!じゃあ、網で魚獲ってるんですか?』

『いや。この島は網を使っての漁はしてないんだ。

網は大きさも種類も関係なく根こそぎ獲ってしまうからね。だから、この島には網元もいないんだ。俺は、たて縄漁をやってるよ。空いた時間には、底魚一本釣りやらね。』

『う〜ん…どんなのか分からないけど!これだけは言えますね!

いつも新鮮な獲れたての魚が食べられて羨ましい〜!』

女の子は笑う。

『そりゃ、漁師だからなぁ〜!あはは』健斗が笑うと女の子は笑いながら

『私、真琴って言います。仕事辞めて、1ヶ月ほどのんびりしようと、一昨日ここに来たんです。繁華街の外れのコンドミニアムに泊まってるんで、良かったら、今度ご飯でもご一緒しません?』

見知らぬ女の子に、しかも、こんな人懐こい可愛い女の子に声を掛けられただけでも嬉しいのに、食事のお誘いなんて…

健斗は心の中で思わずガッツポーズを取った。

そして…

『どうせ明日も沖には出れないだろうし、陸(おか)にいる時はいつも飲みに出てるから…今夜、一緒に飲みながら飯でも食うか?』

健斗の突然の誘いに、真琴はバンザイをする様に両手を挙げ、

『うんうん!勿論OKです!何時にします?』

真琴の人懐こい笑顔に惹き込まれ、アッと言う間にその日の約束が決まった。

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健斗は今は亡き両親と暮らした家に帰ると、庭先でサーフボードに真水をかけ砂と海水を洗い落とし、椰子の木の陰に立て掛けると、今度は浴室に行き、シャワーを浴びた。

そして、広い、誰もいない居間で、次に漁に出た時の為の仕掛けを作っていた。

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いつもは漁協の作業場で、他の船の船頭や乗り子の若い衆と一緒に作るのだが、真琴との約束の時間に間に合わなくなってもいけない。

健斗は、それまでに少しでも仕事を進めたいと、浮かれる気持ちを抑えていた。

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『イチロー!いつものヤツ!』

真琴との約束の時間の少し前から、約束をしていた店で健斗はビールを飲み始めていた。

健斗の生まれ育ったこの小さな島も、最近は内地からの移住者も増え、ここもそんな移住者のやっている店だった。

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健斗のサーフィンの腕前はプロ級で、サーフィン仲間やダイビングショップの後を継ぎ経営している者や役場に勤める者など、未だ島には健斗の幼馴染みが沢山残っており、そんな繋がりから、年寄りから若者、移住者も地元民も、知らない顔もないほどで軽口を叩き合う関係の者ばかりだった。

この店のマスターのイチローもそうだった。

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10分ほど遅れて現れた真琴は…

昼間の印象と全く違う、清楚な中にも大人の魅力に満ち溢れ、色気を感じさせた。

少し焼けて赤くなった肌に、真っ白なワンピースを着、裾に施された上品なカットレースから、細くてしなやかなふくらはぎが伸びている。

白いエスパドリーユを履き、軽やかに、そして息を切らして店に飛び込んで来たのだった。

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『遅れてごめんなさい!!』真琴は両手を合わせ、健斗に頭を下げる。

『いいよいいよ!先に始めちゃったけど!何飲む?それとも飯?何食べたい?え〜とここの店のオススメはねぇ〜』

健斗の矢継ぎ早な質問に、真琴は思わずクスリと笑った。

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2人は、まるで昔からの知人の様に、尽きる事なく話をし、聞いた。

そして、真琴の泊まるコンドミニアムまで送った健斗の真正面に真琴は立つと

『楽しかった!あの…又会える?』と、健斗に尋ねる。

『勿論!陸にいる時なら、毎晩だってご一緒しましょう!』

真琴の顔を見下ろしながら、少し照れた様に健斗は答える。

『ありがとう!じゃあ、明日も?』

『うん。昼間は昨日の浜で波に乗ってるから、暇ならおいで。』

真琴は健斗の言葉に大きく頷き『オヤスミナサイ!』と言うと、花の様な白いワンピースの裾を翻し、健斗に手を振り中に入って行った。

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中学、高校の同級生…

観光客…

短期アルバイト…

役場や観光組合の…

健斗は数々の女性と恋をして来た。

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自分と付き合った女性が、今では近所で他の男の妻となり、母となっている。

そんな女性も沢山いた。

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一夏のアバンチュール。

―旅の恥はかき捨て。

そんな恋愛ばかりをして来たせいか、女性と本気で付き合おうとか、まして結婚なんて、健斗は考えた事がなかった。

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だが、真琴とは今日初めて会ったばかりだと言うのに…

生まれて初めて、自分以外の人との2人の暮らしを、健斗は想像していた。

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健斗が沖に出る事が出来ない時は、昼間から…

漁に出れば、帰ったその夜から…

健斗と真琴は、まるでずっと前からそうだった様に、同じ時を過ごした。

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真琴は、東京でOLをしていたそうだ。

素から人懐こい性格が災いした様で、会社のお局様始め、同僚の女性達から陰湿なイジメを受けたと言う。

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”八方美人”

”尻軽女”

有りもしない噂を立てられ、ロッカーの私物が失くなったり捨てられたり、服が破られているなんて事も、日常茶飯事だったと。

そんな心無い噂を間に受けた上司にまで迫られた時、何も会社はここだけではないと…

何年も堪えて来たのが馬鹿馬鹿しくなったと…

次の日には、その上司に辞表を叩きつけたそうだ。

支えてくれると思っていた彼氏は、実は真琴以外に本命の彼女のいる男で、浮気相手と対決するつもりが、目の前で繰り広げられる男と女の痴話喧嘩に、やっと自分が浮気相手だった事に気付いた…

そんな気持ちをリセットする為に、一人この島に来たと話していた。

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1ヶ月の予定で借りたコンドミニアムだったが、出会って数日のうちに引き払い、真琴は健斗の家に転がり込んで来た。

健斗の家の庭に咲くブーゲンビリアの花を髪に刺し、よく笑い、よく喋る、とても明るい真琴に、健斗はこれから先も一緒にいたいと強く思い始めていた。

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そんなある日…

健斗が沖から戻ると、真琴は持って来たボストンバッグに荷物を詰め込んでいる途中だった。

聞けば、母親が事故に遭ったと真琴は言い

『落ち着いたら連絡する』と。

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真琴と離れ離れになるのは寂しいが、健斗は笑顔で真琴を送り出そうと思っていた。

『真琴さえ良かったら、俺とこれからも一緒に暮らそう。お母さんの怪我が落ち着いたら、いつでも帰って来いよ。』

健斗は真琴を抱き締めながら言ったが、真琴はどこか冷めた感じで、

『うん。分かってる。』

健斗の腕を押し退け視線を外し、乾いた洗濯物を畳み、それをバックの中に押し込めながら答えた。

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一週間に一度の定期便の船が次に島を出るまで、残り2日…

その夜は健斗と真琴はイチローの店で飲みながらの晩ご飯を摂っていた。

最近の真琴の様子がおかしいのは、事故に遭った母親を心配しているものの、すぐに駆け付ける事の出来ない苛立ちからと健斗は思っていた。

だが、真琴がトイレに行った時、イチローが言いにくそうに健斗に話した言葉が、胸に深く突き刺さった。

『ケンちゃん、こんな事言いたくないけど…あの子は止めといた方が良いよ。』

と…

『何?あの子って、真琴の事?』

聞き返す健斗にイチローは目を瞑り頷く。

『ケンちゃんが沖に出ていていない夜なんて、手当たり次第に島の男に声かけてるんだよ。

で、ケンちゃん家に連れて行こうとするんだけど…

流石に島の男はそこがケンちゃん家だって知ってるし、ケンちゃんの彼女だって事も知ってるから誰も付いて行かないんだけど…

でもさぁ、観光客ならそんなの知らないからなぁ…

何人か、真琴ちゃんが観光客をケンちゃん家に連れ込んでるのを見てるんだよ…。

こんな事、ケンちゃんに言い出せないって、皆黙ってたんだけど…。

こんな話し聞かせて…

ごめんな、ケンちゃん…。』

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健斗が沖から戻ると、口に出して言えない違和感を感じる事があった。

何がどうと言えないのだが、自分の家なのに、物の位置が変わったりしている訳ではないのだが、浴室やベッドルームなど、健斗の知らない匂いを感じる事があった。

だけど、真琴がいるからだと、そう自分に言い聞かせ、気が付かないフリをしていた。

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健斗は真琴を誘い、家への帰り道、少し遠回りをして海岸に行った。

明後日の今頃、真琴は帰りの船の中だ。

健斗は、未だ見せた事のない景色を真琴に見せたかった。

少し酔いがまわった様な足取りで、健斗の腕にしがみ付くように真琴は砂浜を歩く。

明かりは空に輝く月と、零れ落ちそうなほどの星だけ。

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すると、健斗は足元のサンゴの欠片を拾うと、波打ち際に投げた。

その瞬間、海に落ちたサンゴの周りが青白い光に包まれる。

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『わぁ〜!!あれは…何?』

健斗にしがみ付いていた手を離し、真琴はまるでブラックライトで照らされた様な青白い光を見に波打ち際に行く。

『夜光虫だよ。

小さなプランクトンなんだ。赤潮って聞いた事があるだろう?

この夜光虫の死骸が大量発生する事を、赤潮って呼ぶんだ。

生きているうち…

夜には、こんなに綺麗な物なのに…

化けの皮が剥がれたら、海の他の命も奪う、恐ろしい物に変わる…。』

健斗の話など聞いてか聞かずか、真琴は波打ち際をバシャバシャと歩き、綺麗な星空の様な光を作っている。

『真琴…』

健斗は海岸近くの茂みに咲くブーゲンビリアを採ると、真琴の額に王冠の様に被せる。

『イタッ!』

真琴は、健斗が被せたブーゲンビリアを頭から振り落とすと、健斗に向かって口汚く罵った。

『アンタ、馬鹿じゃない!?

こんな棘のある花を、どうして頭に乗せたりするのよ!?

サーフィンやってる以外じゃ愚図でノロマで、何も良いところなんて、アンタに無いじゃない!!

いつも魚臭いのも勘弁だわ!!

良い?

私は東京に帰るの!

そうしたら、もうアンタとは二度と会う事もないのよ!?』

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真琴はまくしたてる様に言い放つと、健斗に背中を向けて歩き出した。

夜光虫の光に照らされた真琴の後ろ姿を見ていた健斗は、不意にその背中を追い、そして、足元に転がっていた、打ち上げられた大き目の脳サンゴの死骸を掴むと、真琴の頭頂部目掛けて殴り付けた。

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真琴は、フラフラと2〜3歩歩くと、前のめりになり、そのままうつ伏せに倒れこんだ。

健斗は暫くの間倒れた真琴の姿を上から見下ろしていたが、血の付いたサンゴを海の中に放り、自分の着ていたTシャツを脱ぐと真琴の頭に巻き、真琴の身体を抱き上げた。

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砂に散らばる血の跡を足でならす。

じきに満ち潮になる時間だ。

このまま放って置いても、真琴の血は海が綺麗に洗い流してくれる。

健斗は真琴を抱き抱えたまま、自分の船に行くと、口をガムテープで塞ぎ、両手を後ろに、両足を揃えてロープで縛り、船倉に放り込んだ。

そして、家に戻ると裸になった上半身にTシャツを着込み、又、夜の街へ出かけた。

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『あ…あれ?真琴ちゃんは?』

健斗一人で又店に現われた為、イチローは戸惑いを隠せずに聞いた。

『問い詰めたらどっか行っちまった。はは…』健斗は出されたジョッキを眺めながら答える。

『そうか…

でもさ!ケンちゃんモテるんだから、あんな女なんかよりもっとずっと良い女に出会えるって!』

イチローはそう言い、ウィンクをすると『サービスだよ!』と、二杯目のジョッキを健斗の目の前に差し出した。

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健斗は他の漁師達よりも早くに出港した。

片道8時間弱をかけて、いつものポイントまで船を走らせる。

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この辺りの水深は深い。

はえ縄とは違い、健斗のやっているたて縄漁とは、水深4〜500mにいるカジキをピンポイントに狙った漁だ。

カジキも、物によってはマグロを凌ぐ高値が付く良いものが釣れる。

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その仕掛けに真琴を付ける。

いつも、掛かった獲物を無惨に食い荒らすサメに、上手く行けば真琴の身体を始末してもらえる。

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遺体が見付からなければ、健斗が疑われるだろうが罪に問われる事はないだろう…

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真琴を付けた仕掛けから離れ、魚群探知機を観ながら仕掛けを上げる時間まで、健斗は他の魚を釣って待った。

そして午後の3時を回ると真琴のいる漁場に戻った。

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旗を立てたブイを引き上げ、ウインチを使ってテグスを引き上げて行く。

モーターが唸り、少しずつ獲物が引き上げられる。

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カジキが三匹。

だが、一匹は又今回もサメに食われて売り物にならない。

健斗は未だ暴れているカジキの眉間を銛で突くと船に上げて行く。

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そして…

一番底から上がったのは…

ロープだけだった。

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真琴の無惨な姿は、健斗も流石に見る勇気がなかった。

サメは、そんな健斗の想いを察する様に、ロープごと真琴を連れ去ってくれた。

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全てのロープを巻き取ると、他の魚を傷めない様にカジキの突き出た角のような吻(ふん)を鋸で切り落とす。

―――

ドシン!

―――

その時、横から大波を受けたかの様に船が傾く。

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健斗は鋸を手にしたまま転がる。

何事かと立ち上がり、衝撃を受けた側に行き、海の様子を見た。

だが

…何も見えない…

上半身の身を乗り出し

(何かの漂流物か、魚か…?何に当たったのか?)健斗は海面だけでなく、濃い、深い海の中を覗き込む。

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すると、又

―――

ドシン!

―――

今度は船の反対側からの強い衝撃で、健斗は海に投げ出された。

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だが、サーフィンをしたり、船底の掃除やプロペラにロープが巻き付いてしまった時にはボンベを背負い自分で処理をしている健斗にとって、海に投げ出されたくらいは大きなダメージではない。

濡れた顔を手で拭くと、立ち泳ぎをしながら船に戻ろうと手を伸ばす。

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―――――

ザザザーッ

―――――

『エッ?』

健斗が自分の船に手が届いた次の瞬間、大きな何者かが深い海の底から顔を出す。

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それは…

これ以上ないくらいに大きな口を開けて笑う真琴の顔だった。

『!!!!!!!!』

真琴の顔は、ゲラゲラと笑いながら、健斗の脇腹を食い千切った。

『ううッ!』健斗が呻くと一層大きな笑い声を上げ、今度は立ち泳ぎをしている健斗の右の太腿を食い千切る。

食い千切られた脇腹からは、血と共に内臓が流れ出て行く。

もう自力で泳ぐ事が出来なくなり、沈みかける健斗の身体を海面から顔が出るように真琴は持ち上げると、今度は右の二の腕を食い千切る。

真琴は美しかった顔を歪め、頭を凄い力で振りながら、健斗の肉を食い千切ると貪り食って行く。

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健斗の意識は未だ有った。

ボンヤリと…

『あ〜あ…。俺、こんなんじゃ、もう船に戻れないじゃん…』

そんな事を思っていると、真琴は大きく裂けた口と、ギザギザに尖った三角形の歯を剥き出し、健斗の顔を飲み込むと、肩から袈裟懸けに食い千切った。

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健斗の残った身体は、血の匂いに惹き寄せられたメジロザメやイタチザメ、そしてシュモクザメが綺麗に片付けてくれた。

その遥か深くに、満腹になった一匹の、10m近くは有りそうなホオジロザメが潜って行った。

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海にはポツンと、無人になった漁船と…

何処かから流れて来た、棘が付いたままのブーゲンビリアが浮かんでいた。

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~ブーゲンビリア~

花言葉:

◎情熱

◎あなたは魅力に満ちている

◎あなたしか見えない

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