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短編1
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誰も居ない体育館

誰も居ない建物の中を、必死に走り回る夢なんかを良く見る。得体の知れない化け物なんかに追い掛け回されると言ったホラーテイストで無く、何らかの期限が差し迫っていて、何故かそこに居る為、一刻も早く脱出して外に停めてある車輛に向かおうと、手探りで出入り口を探すと言った展開である。

何故か廃墟で無く小綺麗な施設で、いわゆる学舎(まなびや)の比較的新しい小・中学校だったりする。

で、今回触れる夢も、当時通っていた小学校そのもので、中には私しか居ない。

天気も私の見る夢特有の白い曇り空。

何故か私の足は体育館へと向かい、ガラガラと引き戸を開けて見る。

ズラリと入学式、ないし卒業式を思わせる様な椅子の群れが御行儀良く鎮座し、ステージ右方向の壁には、本来学校に在る筈の無い大時計がゆっくりと振り子を動かしていた。

更に様子が面妖(おか)しいと感じたのは、12時を指したまま鐘が鳴る事も無く針も動いておらず、ひたすらに振り子が左右に揺れるだけで、その時計の上には二本の蝋燭(ろうそく)が灯されているではないか。

「溶け出したら不味い!時計が燃えちゃう」と普通なら思って実力行使に踏み切ろうが、私は不気味な空間に圧倒されるだけで、ポカンと口を開けているしか出来なかった。

もしかすると、あの世に辿り着いたらこうなっているのではないか?と当時の私が勝手にイメージしていたものが、夢に出て来たのかも知れない。

Concrete
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