不在の閻魔(ショート怪談)

短編2
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不在の閻魔(ショート怪談)

この年末年始に見た夢のこと。

もしかしたら、初夢だったかもしれない。

その夢の中で私は駅で電車を下りて、暗くなってきて空が暗色の濃紺、「青い闇」の小さな町の小道を歩いていって。

閉館時間も間際の閻魔堂。それが目的地。

何かどうしても閻魔様にお参りしたくなるような理由があって(私らしくもない)、でも具体的に何なのか知らない。

そうしたら、お堂の建物の奥に行く途中の小部屋で、閻魔の顔をした(お面やかぶり物を付けた?)小さな子供がスヤスヤ眠っている。板間か畳に敷いたお布団で。

その子供をしばし眺めていたら、誰かが人体の動力の神秘について、簡単なトレビアを教えてくれた。

けれども特に怖いとは思わなかった。人気はなくて薄暗いお堂でも、ちゃんと電気はついていた。空気が温かくて外ほどには寒くないし、漠然と親切でアットホームな感じ、厳粛さと温かさが入り混じっているような雰囲気。

それから時間がないから、奥の部屋に板間かタイルを歩いていく。そこには(重要文化財の?)閻魔像が祭られているはず。

お祭りしている像の扉が閉じている。

もうお参り時間が終わり近いからだろうか。

そうしたら仕掛けが作動して、閻魔像を安置した座席台の扉が開いていく。

(ひょっとしたら参拝客にセンサーで反応する機械仕掛けなんだろうか?)

そんなことを思った。

けれど。

せっかく扉が開いたのに、座席台には閻魔像がない。空席になった大きな椅子があるだけ。本来あるべき場所が不在になっている。

それで困ってしまってどうしようかと思っていると、女の声(おかみさん?)がする。

「今日は月に一度?の特別な日ですので、別のお堂にちゃんといらっしゃいますよ」

それで奥の部屋を出てみると、同じ敷地の二軒くらい隣の少し破れかけたお堂の入口から、灯明なのか、金色の光が漏れていた。

(夢はそこまで。以下、考察)

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不思議なことにあまり恐怖は感じなかった。

それは閻魔って「怖い」だけでなく、ものの見方によっては「救い」でもあるからだと思う。

なぜなら善行には果報で報いてくれるのだし、犯した罪以上に過剰な罰や理不尽な虐待をされることはない。つまり、罰を与えるだけでなく、守ってくれる公正さや正義の象徴みたいなもの。

鬼や悪魔とは本質的に異なっている。罰を受けたとしても、それで罪から救われる・報いられる。

一見は不在の(存在しない)ように見えた閻魔(神仏による正義と公正さ)はちゃんと存在しており、安心して良いということ(?)

Concrete
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