第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 第十話

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第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 第十話

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第三回リレー怪談

鬼灯の巫女

第十話

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七月たちが曲津島に渡った翌日の早朝、東野は八月を連れて、神社内の人気のない場所にいた。

東野は近くに人がいないことを確認し

「北嶋・妹、お前、何か俺たちに隠していることがないか?」

そう問いかけた。

「え?別に私は何も……」

八月が言い終わるのを待たずに、東野は続ける。

「初めから気になっていた。なぜお前たちは双子なのに、名前が七月と八月なのか、ここにきて俺は一つの仮説を立てた。

俺は昨日一晩、これまでの出来事を整理していた、まず、西浦が話した、この町にまつわる伝承、あの伝承では明らかに、双子、そして鬼灯がキーワードとなっていた、そしてこの神社の双子巫女はお前たち姉妹を待っていたと言っている。

このことを考えると、まず間違いなく、お前たち双子はこの島と関係がある。次に七月という名前だが、鬼灯の開花時期は六月から七月だ。

もしかして、七月の体のどこかに鬼灯のような形の痣があるんじゃないか?あの伝承の双子の妹のように」

「もし、なっちゃんに、痣があったとしても、妹は、私だから、関係ないんじゃ、ないですか?」

そう八月は反論するが、東野はさらに続けた。

「確かに、戸籍法では、七月が姉で、お前が妹だろう。だが、日本では昔から、双子は後に生まれたほうが兄、姉とする風習があった。当然伝承の時代はその風習に従って、姉と妹を決めていたはずだ。

つまり、伝承の時代で考えれば、七月は双子の妹ということになる。それに北嶋・妹、お前の行動は、どちらかというと、怯える妹というより、妹を守ろうとする姉のように見える。

西浦……偽物の西浦が俺たちの前に現れた時、お前は七月が近づこうとするのを、必死で止めていた。あの行動は俺には姉が妹を守ろうとする行動のように見えた。

もう一度聞くが、お前、俺たちに何か、隠してないか?」

しばらくの沈黙の後、八月が口を開く。

「何も……隠してません」

東野は一つため息をつくと

「そうか、分かった。戻ろう」

そう言って、御堂に向かって歩き出した。

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雷の音で目を覚ました、私と潮は、東野さんと八月がいなくなっていることに気づき、御堂から森に向かってのびている二人分の足跡をたどろうとしていた。

「おい、七月、早く探しに行こうぜ」

潮が、焦った様子で私に言った。

「う、うん」

私は、外に出るため、傘を持ってきて、足跡をたどって行こうとした時

「北嶋・姉、南田、起きてたのか」

そう言いながら、東野さんと八月が、廊下を歩いて戻ってきた。

「八月!」

「東野さん!」

私と、潮は同時に叫んだ。

「東野さん、どこ行ってたんすか!心配したんすよ!」

潮が、少し涙声になりながら、東野さんに詰め寄る。

「少し、外の空気が吸いたくなってな。お前たちはまだ寝てたから、起こすと悪いと思って、声をかけなかったんだが、かえって心配させてしまったな。すまない」

東野さんは、普段と変わらない様子で、落ち着いて、そう返した。

「とにかく、無事で良かったです」

何はともあれ、東野さんと八月が無事で良かった。

あれ?でも、それじゃあ、あの足跡は……?

「おい、西浦と、園さんはどうした?」

不意に、東野さんの声がして、我にかえる。

「そういえば、起きてから見かけていません」

言われてみれば、八月と東野さんが、どこに行ったのかということばかりに気を取られて、渚と園さんがいないことに気づいていなかった。

ということは、森に続いている足跡は、渚と園さんのもの?!

「まずいな……、急いで探すぞ。何か手がかりはないのか?」

東野さんが、険しい顔をしてそう言った。

「手がかり……、そうだ、御堂から森に向かって足跡が続いてたっす」

潮が思い出したように足跡のことを言う。

「急いで追うぞ、西浦が危ないかもしれない。理由は行きながら話す」

そして、私たちは御堂からのびている二人ぶんの足跡をたどり、渚たちを追うことになった。

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「よく聞いてくれ、これから話すことは、一つの仮説に過ぎないが、状況的に見て、ほぼ俺の考えている通りだと思う」

渚たちを追う途中東野さんは話し出した。

「分家の婆さんが教えてくれた歌で、なぜ鬼灯はそのままなのに、双子は瓜二つと比喩を使っているかについて、俺は新たな仮説を立てた。西浦が三つ子で、あいつが幼い頃に亡くなった二人の姉がいるという話は聞いただろう。あいつの姉の死が、何かの儀式と関係していることは、まず間違い無いだろう。

そして、西浦家がなぜこの町を去ったのかは分からないが、少なくとも儀式と関係があるだろう。そこで、あの歌の鬼灯一つに瓜二つという言葉だが、俺たちは複雑に考え過ぎていたんじゃないか?

俺たちは、渚の話を先に聞いていたから、双子のことだと思い込んでいたが、実際はもっと単純で、この部分が差しているのは三つ子だったんじゃないのか?こう考えれば、何も不思議なことなどないんだ。

鬼灯一つというのは、鬼灯の痣を持った子供、瓜二つは残りの二人だ。そして、この町の伝承の双子が、実際は三つ子だとすると、三つ子の一人である西浦が、この町の人間である園さんに、俺たちに知らされずに連れていかれたのは非常にまずい。」

私たちは、東野さんが話した仮説に対し、何も言うことができなかった。東野さんの仮説は、信じられないようなものだが、確かに筋は通っているように感じるし、何より常に冷静な東野さんが、勘や思いつきで話したとは、思えなかった。

それから、しばらく進んだ森の奥の少し開けた場所に渚は立っていた。

「渚!」

私の声に、渚は振り返るやいなや、私に抱きついてきた。

「七月ぃ、怖かったぁ、園さんはどこか行っちゃってなかなか戻ってこないから、もうどうしたらいいのか分からなくて……」

どうやら軽いパニックに陥っていたようで、足跡をたどって帰るという選択肢は思い浮かばなかったようだ。

「西浦、怪我とかはしていないか?」

「うん……」

「よし、とりあえず、御堂に戻ろう」

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神社の御堂に戻る頃には、渚もだいぶ落ち着いてきて、普通に会話出来るくらいにはなっていた。

「さて、西浦。まず、今朝何があったのか話してくれるか?」

東野さんが渚に問う。

「はい、今朝早く、私は園さんに起こされて、森の方に連れていかれたんです。そして、少し開けた場所に来ると、園さんは私にその場で待っているように言って、どこかに言ってしまったんです」

「そうか。ところで……」

東野さんは、一呼吸置いてから続ける。

「お前、昨日すごいものを見たと言っていたな、一体何を見たんだ?」

続く

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