第三回 リレー怪談 鬼灯の巫女 第1話

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第三回 リレー怪談 鬼灯の巫女 第1話

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第1話「旅の始まり」

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昔々のお話です。

ある漁村で、双子の女の子が産まれました。

両親は勿論、村でも目出度い事だと喜び合い、皆が祝福しました。

双子が産まれて、10年が経った頃。

村で大変な問題が起こりました。

何度舟を出ても、魚が全く捕れなくなってしまったのです。

漁業で生計を立てている村にとっては、死活問題です。

困り果てた村人達は、村の外れに庵を結ぶ呪い婆に相談しました。

卦を立てた婆が語るには、

・村に産まれた双子は、徳の高い魂を持つ娘と、その魂に引かれて憑いてきた災いの娘。

・二人の内、鬼灯の痣を持つ子は災いの娘……それが村に禍をもたらしている。

それを聞いた村人達はどよめきます。

確かに……双子の妹の頬には、鬼灯の形をした痣があったのです。

禍を断つ為に何をしたら良いのか……村人達は婆に問います。

婆は静かな口調で、語りました。

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・禍を断つ為に、徳の高い双子の姉の血で刀を鍛えよ。

・刀が出来たら、鬼灯の痣の妹を沖にある小島で切り殺し、バラバラにして海に撒け……決して大地に埋葬してはいけない。

・小島に社を建て、刀を奉り、怨霊封じとせよ。

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……それは、とても残酷な話でした。

しかし、生きるか死ぬかの瀬戸際にいた村人達は婆の言葉に従い、島にあらかじめ社を建て、泣き叫ぶ姉を殺して刀を鍛えると、小島に妹を連れ出します。

妹を舟に乗せたのは、他所から村に移ってきたばかりの若者でした。

若者は『無事にこなしたら船をやる』という約束を村と交わして、この役を受けたのです。

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若者は、幼い娘を切り殺すところまでは勢いで乗り切ったのですが、バラバラに切り刻むという段になって、自分のしている事が怖くなり、娘の体を小島に埋葬して社に刀を奉納すると、村に逃げ帰り、村人達には切り刻んで海に撒いたと嘘を付きました。

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流石に幼い娘を撒いた海には出にくいと、村では三日間喪に伏し、四日目に漁を再開しました。

するとどうでしょう……

あれほど網に掛からなかった魚が、折り重なる様にバタバタと暴れているではありませんか……村人達は大喜びしました。

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ところが……

捕れた魚を良く見ると、全て頭が2つある不気味な姿をしていたのです。

“双頭の魚”を見た村人達は、双子の祟りではないかと怯えました。

その恐怖を煽るかの様に、沖に出た漁師の何人かが、

『例の小島に殺して海に撒いた筈の娘が、人とは思えぬ形相で立っているのを見た!』

と騒ぎ始め、耐えられなくなった若者が嘘を告白します。

翌朝、その若者が夜逃げしたのを皮切りに、村を棄てて逃げ出す者が現れ始めました。

村は閑散として荒れ果て、残った者達も先祖伝来の地を棄てるべきか……と考え始めたのです。

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丁度その頃、1人の旅の僧がこの村を訪れ、事のあらましを尋ねました。

話を聞いた旅の僧は、海に向かって経文を唱え始めたといいます。

そして3日目の朝を迎えた時、海からそれは大きな鬼灯が流れ着きます。

旅の僧はその鬼灯を拾い上げると、様子を見に来ていた村人達に、

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・例の小島に、この鬼灯を納める御堂を建てなさい。

・近隣より双子を貰い受け、その御堂の守として大切にしなさい。

・小島には、絶対に近付いてはいけない……

ただし、もしもまた“双頭の魚”が水揚げされたら、その時は再び、贄を出す覚悟をしなさい……。

と、語りました。

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村人達は藁にもすがる思いで、旅の僧の言葉に従います。

すると再び、普通の魚が網に掛かる様になり、少しずつ新しい住人も増え始め、村は漸く平和を取り戻したのです。

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……しかし…

件の小島の周りに舟を出すと、時折人影を目にする事があるそうです。

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その人影は幼い少女の姿をしているのだとか……

海に撒かず、大地に埋葬された娘が、さ迷っているのではないか……と、村人達は囁き合い、件の島はやがて『曲津島(マガツジマ)』と呼ばれる様になったといいます。

昔々のお話です……。

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「……っというのが、私の故郷・鬼灯町に伝わる昔話!どう?なかなかの迫力でしょ?」

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先程までの語り口とうって変わり、西浦 渚(ニシウラ ナギサ)は弾んだ声で私達に笑いかける。

友人の問い掛けに笑顔で返してやりたいが、隣に座る妹の八月(ハヅキ)に力一杯握り締められた腕が痛くて、顔が引き吊る。

八月に悪気は無く、純粋に怖がってすがり付いているだけなのだ。

そこは良く分かっている。

だからこそネーチャンは耐えているのだが……

「八月、七月(ナツキ)の腕が太ましいからって、絞め過ぎw」

「わわわッ!?ゴメンね、なっちゃん!!」

南田 潮(ミナミダ ウシオ)のニヨニヨ笑い付きの助け船に、漸く八月の腕が緩む。

普通に「絞め過ぎ」だと伝えてくれれば良いものを、こいつはいつもこんな調子で一言多い。

「大丈夫、気にしないで八月w……太ましいってなんだ、コラ!潮!!!」

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八月に優しくフォローを入れて、慌てて飛び退く潮を睨み付ける。

悔しいが潮の退避した位置は、射程距離外だ……最近、ますます逃げ足が速くなった。

昔はこいつの軽口には、連撃でKOしてやったのに。

私達……北嶋 七月(キタジマ ナツキ)と八月(ハヅキ)の双子と、潮は家が近所の幼馴染みだ。

小中は一緒、高校は3人バラバラに進んだが、何の因果か大学で再び集結して同じサークルに所属している。

と言っても、別に示し合わせた訳ではない。

私が八月を誘ったのは事実だが、潮とはサークルで顔を合わすまで同じ大学にいる事さへ知らなかった。

私は私で、この【旅行サークル・オカルトの部】というふざけた名前のサークルに興味があった訳ではなく、高校からの友人である渚にせがまれて、席を置く事になったのだ。

そして潮はというと……

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「北嶋・姉、潮、騒ぎ過ぎ…公共の乗り物で騒ぐな。」

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東野 真砂(トウノ マサゴ)に軽く嗜められ、私はググッと押し黙る。

新幹線の中だという事を失念していた恥ずかしさもあるが……駄目だ……この人には、敵わない。

一方の潮は何故か嬉しそうに、ウッスッ!っと元気な返事を返している。

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東野さんは潮の高校の先輩で、潮曰く『リスペクトしている』らしい。

在学3年目、現在は2回目の2年生だ。

そもそも普通の旅行サークルに入った私達が、オカルトツアーばかりに参加する嵌めになった原因がこの人と親しくなった事にある。

得体の知れない迫力と、とんでもない行動力を併せ持つ東野さんのベクトルが、常に恐怖を求める方向に向いているせいで、他のサークルメンバーが好んで参加するキャッキャwウフウフwwの出会い系旅行は、縁の無い物になってしまった。

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「西浦、今もそのお堂と島は存在するのか?」

東野さんの問い掛けに、私達の視線が渚に集まる。

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そこで漸く渚がムクれているのに気が付いた。

どうやら自分の話に注目が集まらなかったのが、気に入らなかった様だ。

ジェスチャーだけで『ゴメン!』と何度か謝ると、少しだけ気を取り直してくれたらしい。

東野さんの質問にニッコリと応えた。

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「ありますよ!お堂に大きな鬼灯があるとか、島にゾンビ少女がいるとかは、分かりませんけど。」

そもそも禁忌ですからね、この話……と渚は得意気だ。

禁忌なら話しちゃいけない気がするが、渚は平気な様子だし、東野さんは興味津々だし……そもそもこの旅の行き先は、その鬼灯町な訳だし……

嗚呼、嫌な予感しかしない。

きっと同じ事を考えているのだろう……八月が不安げな表情で私を見詰めている。

私は何も起きない事を願って、窓の外の美しい海に視線を向けた。

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第2話へ続く

Concrete
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(私の中でやっと)始まりました。リレー!!
これ好きなやつや~~と、いい予感しかしない(すみません、まだ内容把握していなくて。みなさんにはもういったん落ち着いたイベントだと思いますが)
随時読み進めていきたいと思います!!

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