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長編10
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【セブンスワンダー】猫

これは、俺が文芸部――またの名を七不思議部――に入部したばかりの、ある春の日のことである。

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慢性鼻炎にして花粉症体質の俺は、その日、顔が半分すっぽり隠れるマスクをして、鼻をグスグス言わせながらも、放課後になると律儀に部室へと足を運んだ。

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部室のドアを開けると、窓際の古ぼけた机に突っ伏して眠る先輩――文芸部の部長――の姿があった。

彼女のいるその場所はちょうど、薄暗い部室の中で唯一の陽だまりになっていて、机の上に広がった部長の長い黒髪は、午後の穏やかな陽射しを受けてキラキラと光って見えた。

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そんな部室の眠り姫の頭の横に、ちょこんと立つ黒い小さな影があった。

頭には特徴的な二つの三角型。

なだらかな曲線で構成されたフォルム。

やがて影の中から二つの目が現れた。目を開いたのだ。

黒猫だった。

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俺は部室の入口に立ったまま、しばし猫と見つめあった。

夜に浮かぶ、琥珀のような黄色い二つの目。

吸い込まれそうなその瞳に、なぜか視線がそらせなかった。

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どれくらいの時間そうしていただろうか。

長いようで、実際は一瞬のことだったのかもしれない。

窓から少し強い風が吹いてきて、カーテンをふわりと大きくなびかせた。

その風に目を覚ました部長が小さく伸びをしてから体を起こす。

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「ん......クロウ。来てたんだ?」

机の上に座る黒猫に気づいて、部長が優しげに声をかける。

それから部室の入口に立ったままの俺に気づいて、「ああ、君も来てたんだ」とあくび混じりに言う。

なんだか猫のついでに言われたようで複雑な気分になった。

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「部長、その猫、窓から入って来ちゃったんだと思うんですけど、追い出しますか?」と俺が尋ねると、部長は「ううん、大丈夫」と言って席を立ち、棚の後ろをゴソゴソ探り始めた。

振り返った彼女が手にしていたのは、キャットフードの箱と、プラスチックのエサ皿だった。

そして皿を足元に置いて、その中にザラザラと乾燥したキャットフードを入れていく。

猫はその音を聞くと、机の上から音もなくするりと降りて、彼女の足に身体をすり寄せた。

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「どうぞ。お食べ」

部長のその言葉を待ってから、黒猫はゆっくり皿に頭をつき入れ、振舞われたエサをカツカツやり始めた。

がっついていない。行儀がよい。

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「部長、この猫はなんなんです?部長が飼ってるんですか?」

学校の部室で?とも思ったが、一応訊いてみる。

「ううん。この子はたまにこうしてフラリと現れるの。基本は野良のはずだよ」

それにしては毛並みが良い。栄養が足りているようだ。

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「でも、黒猫でクロってのは安直ですね。文芸部なら一捻りほしかったな」と俺が憎まれ口を叩くと、

「違う違う、クロじゃなくてクロウ、英語の『crow』【 カラス】から取ってるんだよ」文芸部ならちゃんと聞き分けて気づいてほしかったな、と逆に一捻りにされてしまった。

やがて皿を空にしたクロウは、椅子に座った部長の膝の上に飛び乗り丸くなった。

美人の膝を独占できるとはうらやましい。奴がオスかメスか知らないが。

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「図々しい猫ですね……」

心の中のひがみが反映されたようなセリフが、俺の口をついて出る。

「だめだよ?そんなこと言っちゃ。いくら猫でも、この子はこの部では君や私より古株なんだから」

特に七不思議の方で、とクロウのお腹を撫でながら部長がつぶやく。柔らかそうだ。

そして不意に、何か思いついた顔でこちらを見た。

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「そうだ。君、今日この後時間ある?」

「え?まあ、はい……」

唐突な問いかけに思わず首肯する。

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「じゃあ、部長命令。

今日、これからクロウの後をついて町を歩いていらっしゃい」

ほれほれ、と言いながら、部長は膝の上に乗った猫をゆり起こす。

クロウは不機嫌そうな顔でその手を見た。大きく伸びをして起き上がる。

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「ええ?そいつの後をですか?なんでまた?

それに、いつまで追っかけろっていうんですか?」

「男の子なのに質問が多いなあ。そうすれば、この子のことがよくわかるからだよ。

いつまでって?――この子の身体に見てわかる変化が起きるまで、かな」

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部長は意味不明なことを言いながら、クロウを持ち上げ、開け放たれた窓辺へと歩いて行く。

窓の桟(さん)のところに猫を置くと、ぐいぐいとお尻を押すように外へと促す。

やがて猫は外の木の枝へと飛び移り、姿を消した。

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「はい、いってらっしゃーい。

ほらほら、クロウ行っちゃったよ?君もすぐに昇降口から追いかけないと見失っちゃうよ?

ちなみに、もしクロウを追跡できなかったら、深夜墓地野宿の刑(連泊)だからね」

俺は慌てて部室を飛び出した。

綺麗な見た目に騙されていたが、あの人は意外とドSなのかもしれない。

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大慌てで靴を履き替え、外へと飛び出した俺だったが、意外にもクロウはすぐに見つかった。

校門の門柱の脇に、ちょこんと座って下校する生徒たちの姿を見上げていたのだ。

そして、俺の姿を認めると、背を向けてゆっくり歩きはじめた。

俺のことを待っていてくれたのだろうか。

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猫の尾行と聞いて、俺はさぞかし無茶なことをやらされるものと身構えていた。

なにせ相手は動物なのだ。

塀の上を歩かされたりとか、民家の庭を無断で通り抜けたりとか、そんな決死の追跡劇もあり得る、と思っていた。

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だが、意外にもクロウは時々立ち止まりながら、歩道をゆっくりと進んでいく。

俺が後ろをついて歩くことも、気にしている様子はない。

しかしはたから見たら、マスクで顔を隠した男子学生が猫を尾行しているわけで、怪しい絵面ではあっただろう。

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やがてクロウは、小さな商店街の魚屋の前で足を止めた。

店の奥で座って、頭で船を漕いでいた初老の店主は、クロウの鳴声に気付くと「おお、ゲンタ!来たのか」と枯れてドスの効いた声で呼びかけた。

そして刺身の切れ端を盛った皿を持ってきて、店先に置いた。

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クロウはそれをペロリと平らげると、しばらく店主に背中を撫でられていたが、やがてふいと魚屋を離れた。

店主の「また来いよ」という声を背に歩き出す。

俺も魚屋に怪しまれないよう、ただの通行人のふりをして追跡を再開する。

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商店街を抜け、住宅街の坂を上ると、見晴らしのよい場所に出た。

そこは広い霊園になっていた。

無数に立ち並ぶ、大小様々な墓石と卒塔婆の群れ。

その間を細い石畳の通路が迷路のように走っている。

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午後の光に満ちた墓地は、おどろおどろしい気配など全くなく、ヒラヒラとモンシロチョウが飛び交う様子は、実にのんびりとしたものだった。

線香の香りが辺りを包んでいる。

クロウは墓石の間をスイスイと進んでいく。

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黒猫に導かれるままに進んでいくと、霊園の片隅に大きな桜の老木が生えている場所があった。花はすっかり散って、葉桜になっている。

老木の足元は陽だまりになっており、そこには5~6匹の猫たちが思い思いの格好で群れていた。俗に言う、猫の集会場という奴だろうか。

クロウはその輪の中に加わると、丸くなった。俺は少し離れた墓石の陰からそれを眺めた。

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猫たちはじゃれあうわけでもなく、各々気ままに振る舞っている。

目をつぶっていたり、あくびしてみたり、背中を地面にこすりつけていたり。

たまに誰かが「ナー」と鳴き、誰かがそれに「ニー」と返す。

見ているだけで眠気を誘われる光景だった。

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15分ほどその場にいただろうか。

しゃがみこんであくびをかみ殺していると、クロウはおもむろに起き上がり、ゆっくりと歩き始めた。

猫たちを驚かさないよう、足音を殺してその後を追う。

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その後クロウは、様々な場所を歩き回った。

古い神社、町一番の大病院、交番、隣町に最近開店したパチンコ屋、老人ホームなどなど。

猫はそれらの場所で立ち止まってじっと何かを見ていたり、丸くなったりした。

色々な人間にクロウとは違う名前で呼ばれ、エサをもらったりもしていた。

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日はどんどん傾いていく。

一風変わった道案内にまかせて町を巡るのもそれはそれで面白かったが、当初部長が言っていた指令をまだ完遂できていない。

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『身体に見てわかる変化が出るまでかな――』

だいたい見てわかる変化ってなんなんだ?俺はそれを教えてもらっていない。

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尻尾が二股に裂ける、とか?

急に後ろ足で立って、二足歩行を始めるとか?

人語を話し始めるとか?

はたまた、猫耳の少女に変身するとか――

......俺にそんな趣味はないし、クロウがオスかメスかも俺は知らないのだ。

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はじめに出発した高校近くの踏切に差し掛かった頃には、辺りは宵闇に包まれていた。

結局、隣町まで含めてぐるりと一周してきた形になる。

罰ゲームを受けるハメになるんだろうかと、半ばあきらめかけていた、その時だった。

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shake

「ニャーーーーオウゥゥゥーーーーーーー」

長い、しわがれた声が辺りに響いた。

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「――クロウ?」

踏切の遮断機の脇、街頭の明かりの下に佇む小さな影。

黒猫がこちらを振り返ったとき、

「あっ……」

俺は思わず声をあげた。

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夜に浮かんだ宝石のような二つの目。

右目は琥珀のような澄んだ黄色。

そして左目は――、

藍玉(らんぎょく)のように、澄んだブルーに変わっていた。

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今日一日、ずっと見てきたのだ。確かについさっきまで両目とも黄色だった。

これが見てわかる変化、なのだろうか。

だが、これが一体なんだと言うのだろう?あの部長が、俺にこれを見せるために、わざわざ尾行を命じたのだ。

これだけじゃない。この先がなにかがあるはずだ。

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クロウは踏切の下で、慌ただしく動き始めた。

その場でクルクル円を描いて歩いてみたり、遮断機をじっと眺めてみたり。

そして突然、地面を蹴って走り出した。

俺は慌ててその後を追う。

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空にはおぼろな月が浮かんでいる。

暖かかった昼間の熱は、すっかり空に逃げたようで、夜の底はひやりと冷たかった。

駆けていく黒猫。追いかける自分。

黒猫が闇に溶けて見失なってしまわぬよう、俺は目をこらして走る。

魚屋のある商店街を抜け、昼間立ち寄らなかった住宅街へ続く道を行く。

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走る。

走る。

走る。

走って――。

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やがてクロウはとある民家の前で立ち止まった。

少し遅れて俺も追いつく。

それはごく一般的な二階建て家だった。

門柱には「斎藤」という表札がかかっていた。

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クロウは窓から漏れる明かりをじっと見つめていた。

その明かりの向こうにいる誰かを、待っているかのように。

そして、黒猫は、

「ナゥーー……」

小さく、ひとつ鳴いた。

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俺はその声に、なぜか胸を締め付けられる想いがして、思わずクロウの名を呼んだ。

猫は門柱へ飛び上がり、ちらりとこちらを見てから路地の向こうへ消えた。

振り返ったその目は、両目とも琥珀色だった。

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帰路についた俺は、トボトボと歩いて先ほどの踏切の前までやってきた。

踏切を渡ろうとしていたところで、カン・カン・カンという警戒音とともに、遮断機が降りる。

ぼんやりと立ち止まっていると、やがて轟音とともに列車が目の前を通過した。

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列車の車内から洩れる明かりの中、俺は見た。

踏切の遮断機の脇に置かれた、真新しい花束。

そして、ここで事故があったことを伝える立て看板。

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『4月○日、近所に住む斎藤千穂ちゃん(8歳)が、踏切で事故に遭い亡くなりました――』

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猫に九生あり、って言ってね?

猫はたくさんの魂があるって、昔から言われているの。

それが本当かどうかはわからないけれど――、でもね。

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もしかしたら、猫の身体って、人間や他の生き物よりも、魂に対する容量が大きいんじゃないかなって思うんだ。

それはつまり、自分以外の魂を同時に入れられるくらい、広いってこと。

人間で言ったら、霊媒体質ってことになるのかしら。

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猫がたまに、なにもない空間をじっと見ていたり、耳を澄ましているときがあるじゃない?

そんな時、彼らは私たちには視えない、聴こえない、なにかを感じ取っているのかもしれない。

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クロウはね、普通の猫よりも、もっともっとその能力が強いんだ。

私も先輩から教えてもらったの。

その先輩も、もっと前の先輩から聞いたって――。

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「先輩は敬いなさい?」

部長はそう言って微笑んだ。

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慢性鼻炎にして花粉症体質の俺の顔から、大きなマスクが消えた、ゴールデンウィーク過ぎのある日のことだった。

放課後になり、俺は律儀に部室へと足を運んだ。

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部室のドアを開けると、定位置である日当たりの良い古びた机に、部長の姿はなかった。

窓が開いているので、一度部室に来て、今は席をはずしているだけかもしれない。

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部長の代わりに、机の上にちょこんと立つ、小さな黒い影があった。

クロウだった。

逆光になっていて、後ろを向いているのか、前を向いているのかわからない。

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「――クロウ」

俺が呼びかけると、くるりと振り向いた。どうやら後ろを向いていたらしい。

夜に浮かぶ、宝石のような二つの瞳。

右目は澄んだ琥珀色。

そして左目は――

藍玉のように澄んだブルーだった。

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俺は小さく息を飲む。

そしてつぶやく。

「クロウ、お前、今、誰なんだ――?」

俺の問いかけに、黒猫の姿をしたソイツは「ニアァ」と低い声で短く応えた。

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