とあるアパートに住んでいた友人(以下C美)の話です。
C美がそのアパートに暮らして、約3年が経とうとしていた頃、ある相談を受けました。
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__最近、誰かに見られてるような気がする。
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その視線は部屋にいる時に強く感じるらしく、彼女の予想では≪人間ではないモノの感じがする≫との事でした。
霊感はあっても、霊媒師ではない私は、力になれるか分からないと言うも、とにかく来て欲しいの一点張りでした。彼女の熱烈な説得に負け、私はC美の住むH県のアパートへ夜行バスで向かったのでした。
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C美とは、共通の趣味でTwitter上にて繋がった友人で、2人で遊んだりすることはありましたが、彼女の家へ行くのは初めてでした。
駅まで迎えに来てくれたC美と共に、問題のアパートへ向かいました。
道中、詳しく部屋で起こる現象について聞いたのですが、C美は『視線を感じる。』としか言わず、思い当たるような原因について問うも、首を振るばかりでした。
C美の暮らすアパートは2階建てで、1DKのどこにでもあるようなアパートで、外観からはおどろおどろしい気配はなく、むしろ建ってから間もない綺麗な建物でした。
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C美の住む204号室の角部屋の玄関扉を開けると、真夏だというのにおかしいくらいの冷たい空気を感じました。涼しいどころか、少し鳥肌が立つくらいです。
「寒いよね?ここ最近ずっとなんだ。」
そう云って、苦笑いをするC美に「そうなんや。」と軽く相づちをうち、お邪魔させて貰いました。
部屋の冷気に反して、C美が感じていたという≪視線≫を私は感じることはありませんでした。
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霊感がある。と言えば、どんな霊でも視える。なんて思われがちなのですが、私のように未熟にしか発達しなかった霊感は、霊の出す周波数のようなものが上手い具合にリンクしなければ視ることが出来ないのです。Hzが受信できないラジオみたいなものですね。なので、誰かが視えていても、私には全く視えないし、気配すら感じないことも少なからずあります。今回はそのケースなのかと、自分の中で安堵なのか落胆なのか、よく分からない溜め息が零れました。
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昼間に着いたので、夜までたっぷり時間はあります。
寒さに強い私でも、この部屋の冷気には耐えがたいものを感じ、C美のカーディガンを借り、拙い話で盛り上がっていました。外が段々と暗くなり始め、時間を見ると19:00を少し回ったところでした。女子の会話は、途切れずにまあこんなに長く続くものだ。なんて内心感心しつつ、帰りの新幹線もありましたから、帰り支度を始めようとした時、C美に腕を掴まれました。
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「今日、泊まって行ってよ。」
「いや、うち明日仕事やけ無理や。」
「お願い。」
あまりに真剣な顔でお願いされたので、急遽代わって貰える人を探し、翌日の仕事を休み、C美の家へ泊ることになりました。
「ごめんね、無理言って。」
「まあ、代わり見つかったし、ええよ。」
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C美の作った夕食を食べ、一緒にお風呂へ入り、宅飲みに華を咲かせ、深夜1:00を回ったところで、急にC美の表情が曇りました。
「どないしたん?」
「…見られてる。」
「どこから?」
「分からない。でも、見られてるの。」
「…もう寝よ。一緒に寝てやるけ。」
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折角C美の敷いてくれた布団に若干の申し訳なさを感じつつ、私とC美は同じ布団に入り、酒の力も借りてか、ものの数分でC美の寝息が聞こえてきました。
怖さからか、私の手を握ったまま眠りについたC美に、心の中で謝罪をしました。
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『ごめんな、これはどうしようも出来んわ。』
実は、C美が先程視線を感じると言った時、私には壁や天井、床や家具、あらゆる場所からギョロリと除く無数の目を見ていたのです。それは人の眼球ではなく、動物のモノでした。目だけでは、犬か猫か、はたまた魚か鳥かを判断する事は難しかったのですが、明らかにこの部屋には無数の動物霊が憑りついていることが分かりました。
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動物霊は、ヒト型の霊よりもタチが悪いと聞きます。
そんな霊体が50、60といるわけですから、今後C美になにかしらの影響があってもおかしくはありません。今の段階で然程の影響が出ていないのが不思議なくらいでした。
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無数の目に囲まれた部屋で眠ることなど出来ず、一睡もしないまま朝を迎えました。
ベランダでタバコを吸っていると、C美がベランダの扉を開け、出て来ました。
「おはよう。」
「おはよう。良く寝れた?」
「雪がいたからかな、久々に安心して熟睡しちゃった。」
「良かった。」
自分で持って来た携帯灰皿に、タバコの灰を落としつつ、C美に聞きました。
「なあ、C美ってさ動物好きけ?」
一瞬C美の顔が強張りました。
私の予想は残念ながら的中していたようです。
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C美は仕事に追われ、付き合っていた恋人には振られ、日々憔悴した生活を送っていました。
たまたま家の近所にある公園で、羽を怪我した雀を見つけたのだとか。
その時、彼女の中で何かが切れるような感覚があり、気が付けばその雀を何度も何度も靴で踏みつけていたそうです。
ぐちゃぐちゃに潰れたソレを見て、言いようのない恍惚感に満たされたのが始まりでした。それから彼女は、野良猫やペットショップで安く買った魚、生まれた子犬の引き取り手を探していた友人から引き取った子犬、それらを自分の感情赴くままに拷問・惨殺していたそうです。初めはあった罪悪感も、行為後に訪れる恍惚感・快感にどんどんかき消されていったとのことでした。
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私が視た無数の動物たちの霊。
それは、部屋に憑いているのではなく、彼女自身に憑りついているのです。
怨み・辛み・憎しみを込めて、ジーっと彼女を見つめていた。
あれだけの尊い命をおもちゃのように扱った彼女です。
彼等の怨みから逃れることは出来ないでしょう。
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_____。。。
それ以来、C美とは絶縁をしました。
今でも、残虐な行為を続けているのかは定かではありませんが、私は思うのです。
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惨たらしく苦しんで死ね。そして死して尚、地獄で永遠に焼かれてしまえ。
そんな人道を外れたような考えをしてしまった私も、いつかは地獄で焼かれてしまうのでしょうか。
…なんて。
作者雪-2
お盆も終わり、いよいよ明後日から仕事…なんて憂鬱な気持ちになっている方は多いのではないでしょうか?
私はというと、転職で9月中旬まで絶賛ニート中であります!!
看護師は看護師ですが、病院を変わることになりまして。
あああ…ニート最高やああああ!!!(クズ)
今回のお話しは≪帰って来た雪ワールド≫ってな具合の胸糞悪いお話しでした。
真実か、創作か…それは皆様のご想像にお任せしましょう。
↓7月アワード受賞作品↓
【トモダチ △】怖42
http://kowabana.jp/stories/29158
↓8月投稿過去作品↓
【曾祖母ちゃん】怖33
http://kowabana.jp/stories/29409
【夏みかん】怖47
http://kowabana.jp/stories/29459
【独り歩きの噂】怖21
http://kowabana.jp/stories/29559
お暇な時にでも読んで頂けたら嬉しいです。
最近は初めましての方もコメントを下さったりしてくれ、とても嬉しいです。
今後も頑張っていきます故、皆様温かい目で見守ってくださいませ。