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短編2
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Mの肖像画

図書室の窓の外は、いつの間にか真っ暗だった。

急いで戸締りをし、鍵を返すために職員室に向かう。

美術室の前を通り過ぎるとき、中から物音が聞こえた。

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ドアを開けると、キャンバスの前に少女の後ろ姿があった。

イビキが響く。

僕はその頭をひっぱたいた。

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shake

「ありがとうございます!」

奇声をあげて跳び起きたのは、後輩の小森幸恵だった。

「あ、隠居先輩」と寝ぼけた声で言うので、もう一発。

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彼女は「美術室のドM」の別名を持つ美術部員だ。

僕の塩対応を喜び、懐いてきて困っている。

絵画には非凡な才能を持っているのに残念な奴だ。

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幸恵は嬉しそうな顔をしたが、すぐにそれをひっこめた。

「あの…織衣先輩のこと、お気の毒でした…」

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先日、一人の少女が亡くなった。

世間ではよくあることだ。

それが僕の最愛の人でなければ。

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「言いにくいんですけど、私見つけちゃったんですよ。

織衣先輩が描かれた"Mの肖像画"」

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"Mの肖像画”とは、学園の七不思議のひとつだ。

校内で人が亡くなる時、その人間を描いた肖像画がいつの間にか現れるという。

それには赤い字で"M”のサインがあるらしい。

曰く、死神の肖像画。

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「見せてくれ」

「え…?」

shake

「はやく!」

shake

「は、はい!」

幸恵は慌てて駆けていった。

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僕は怒っていた。

死神だかなんだかしらないが、そんなものに織衣を奪われたかもしれないと思うと、殺したくなった。死神を殺せるかは知らないが。

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幸恵が戻ってくる。

「こ、これです」

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正直見るのは怖かった。

僕は覚悟を決めてその絵を眺める。

「これは…」

そこに描かれていたのは。

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wallpaper:27

十五夜。

屋上で僕に想いを告げたあの日の、澄んだ瞳の彼女。

誰も知るはずがない、二人だけの時間。

そして"M"のサイン。

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wallpaper:1

たしかに、人ならぬものが描いたに違いない。

だけど。

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「幸恵、これを描いたのは少なくとも、怖い死神じゃないよ」

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それは人の命を弄ぶ存在ではなく、学園で亡くなった生徒を悼む何かが描いた、優しく悲しげな筆致の肖像画だった。

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