日本の「閻魔大王」について。
大元を辿れば、古代インドの「リグ・ヴェーダ」に出てくる「ヤマ」であるらしい(邦訳あり、「ヤマとヤミー」の項目参照)。つまり「最初の死者」で「来世の発見者」とされる神様(人間)。
その伝承が中国に入り、(冥府のある)「地下の世界」という考え方が付加されたとか。仏教的な見方の文化伝統だが、清王朝(中国最後の満州族による征服王朝)の怪談「聊斎志異(りょうさいしい)」(邦訳あり)にも「判官」が登場している(冥府を管理する役人という解釈)。
来世についても色々な考え方があるようで、古代ギリシャや古代メソポタミアは中国と同じように「地下世界」のイメージだったようである。ちなみに古代メソポタミア(のシュメール神話)の「ギルガメシュ(英雄叙事詩)」(邦訳あり)は、ギルガメシュがいかにして「冥府の王」になったかの起源説話でもあるそうだ(インドのヤマに似ている)。
また、日本では山や海の向こうに来世があるという見方があるようだ。実はヨーロッパの古代ケルト人(ガリア人)などにも「海の向こうの来世」という考え方があったようである。中世にキリスト教の僧侶が冥府に「航海」する逸話があるし、アーサー王伝説でも最後には「海の島」に向かうのだとか(?)
はっきりとした天国・地獄のイメージで有名なのは仏教だけでなく、キリスト教やイスラム教だが、実は古代エジプトでも「死後の審判」の考え方があったようだ(心臓と正義の羽根で重さを釣り合わせ、救済されるか怪物に喰われる)。
なお、「死後の復活」の思想も古代エジプトにあったようだが(そのために古代エジプトでは死体をミイラ加工で保存し、キリスト教では火葬より土葬する)、実は「世界破滅と再生」(ラグナロク)の考え方は北欧神話にあったりするようだ(世界最後の善悪最終戦争「アルマゲドン」はキリスト教などの有名な考え方だが)。
人間の考えることが似ていたり、あるいはアイデアが伝わって変容したり。精神的な文化というのは世界で時代や地域を越えて、意外と相互につながっているようである。
作者退会会員
世界の伝説・伝承についての豆知識と考察。こちらで別作品として掲載している「吸血鬼と食人鬼」「天然の狸と狐の女房」「緑の殉教と聖遺物」などと同じような、読み物・エッセイ記事。
備考
(掲示板)たぶん「余命三年時事日記」(実在ブログ)が一番怖い
https://kowabana.jp/boards/101207