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あるところに、仲睦まじい5人家族がいました。
誰が見ても羨むような理想の家族でした。
夫は、自分の経営していた会社の経営不振に悩んでいました。
しかし、それにめげることなく、懸命に会社の復興に力を注いでいました。
その甲斐があったのか、会社は倒産の危機を免れました。
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妻は、そんな夫を支える優しい存在。
美人で気立てが良く、気取らず、近所付き合いも良好でした。
料理が上手な彼女はよく自宅へ友人たちを招き、料理教室を楽しんでいました。
長男は今年から、医師への第一歩となる研修生です。
専攻は外科医なのだとか。
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次男は勉強はイマイチで高校を卒業後、すぐに就職。
工場勤務と聞けば『落ちこぼれか。』なんて思うかもしれません。
しかし、彼は人一倍の努力をして、最年少で現場監督にまで上り詰めたそうです。
長女は母親に似て容姿端麗。
そのあまりの美しさからモデルにスカウトされ、雑誌からTVからと引っ張りだこの売れっ子さん。
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こんな理想的な家族はみんなの憧れの的でした。
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ある夜、夫婦はコーヒーを飲みながらこんな会話をしました。
「私たちは、本当に幸せね…。」
そう呟いた妻に夫は続けます。
「ああ、幸せだ。子供達も元気で逞しく育って、文句の言いようもない。」
「あの子たちの将来を考えると時々、不安で堪らなくなるわ。」
「そんなマイナスな考えは持たない約束だろう?」
「そうだけど、でも…。」
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「お前のおかげで子供たちは、みんな健康に育った。今じゃ病気一つしない。だろ?」
「ええ、そうね。アナタもよく頑張ってくれてる。そのおかげで、こうして生活を出来ているんですもの。いつもありがとう、アナタ。」
「良いんだよ。全ては家族の幸せのためだ。そうを思えば何でも立ち向かえる。」
「…そうね。家族のため。」
「ああ。さて、もう休もう。明日も早いんだ。」
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夫の声に促されるように5人分のコーヒーカップを台所へ運ぶ妻。
「家族の幸せのため、よ。」
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___。。。
本日、信じられないニュースが飛び込んできました。
先日、〇〇企業の社長宅から3人の遺体が発見されました。
遺体は天井裏に放置されており、腐乱の具合からも死後2週間は経っていたようです。
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また、遺体の内部は医療的処置により切除され、持ち去られた箇所がいくつもあるもよう。夫婦は既に家にはおらず、現在も逃亡中。会社の倒産危機を前に3人の子供たちと養子縁組をした一件は世間を大きく賑わせました。
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「お金が無くても、幸せはあるって信じたいんです。」
「家族の為に、会社の復興により力を入れていきたいと考えています。」
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そうコメントをしてから1年後の今日の事件で、世間も困惑している状況です。
今後引き続き、捜査をしていく方向です。
___。。。
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「生きていくためには、お金が必要。」
「家族の為なら何でも出来る。」
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『家族の為なら…ね。』
そう云って顔を見合わせた夫婦はしっかりとお互いを感じるように抱き合い、目には見えない≪家族≫の感触を噛みしめていたのでした。
作者雪-2
復帰後、初の投稿となります。
今回のお話は、ある映画からヒントを頂き、執筆した作品です。
GWの連投企画を流してしまったので、今日から金曜日までの5日間!
平日ではありますが、元気に投稿していこうと思っています!
応援の程宜しくお願い致します( *´艸`)★
↓5月投稿作品は以下より↓
【不可解な死】怖24
http://kowabana.jp/stories/28773
↓1月に高評価を頂けた処女作品↓
【やってしまった】怖44
http://kowabana.jp/stories/27969
↓2月月間ランキング3位受理作品↓
【赤ちゃん】 怖42
http://kowabana.jp/stories/28114
↓3月月間ランキング3位受理作品↓
【洞窟探検】 怖41
http://kowabana.jp/stories/28340
↓4月月間ランキング1位受理作品↓
【叫び声】40
http://kowabana.jp/stories/28591
お暇の際に、お目汚しになればと思います。
※駄文失礼しました。