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愛は哀より重し(一行怪談)

短編2
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愛は哀より重し(一行怪談)

オートロックマンションに住む私の部屋のドアポストには、夜毎「愛しています」とだけ書かれた手紙が差し込まれるのですが、最初は丁寧だったその筆跡が近頃少しずつ乱れ始めています。

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「一年後に逢おうね」と、夢の中で俺に言った見知らぬ彼女はとてもとても美しかったのに、「半年後に逢おうね」「ひと月後に逢おうね」「一週間後に逢おうね」と時が進むにつれ、その顔は窶れ爛れ溶け、ところどころ骨が見えるようにまでなり…、

昨晩の微睡みで「明日逢いに行くね」と告げてきた彼女に一年前の面影はなく、落ち窪んだ眼窩から闇だけが俺をじっと見ていた。

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私を独り残し先に逝ってしまったあなたへと怨み言を吐きながら、その遺骨を砕いて粉にして飲み干したのだけれど、ねえ、あなた、お腹がこんなに大きくなってくるなんて、ふふ、赤ちゃんをくれたでしょう?

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君への想いが膨れ上がって限界を迎えて破裂して、飛び散った僕の肉片と血液と愛が全部ぜーんぶ君にぶっかかって、一生のトラウマになればいいのに。

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天井から時折伸びてくるすらりとした白い腕にキスしようとするも、嫌がって逃げるから無理に捕まえて引っ張ったわけだが、その瞬間十数本もの腕が一斉に降りてきたことに驚いて手を放してしまい、惚れた腕がどれだかわからなくなって今非常に困っている。

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階段にタール塗りたくって逃げられなくしようが、使用人総出で住所割り出して結婚迫ろうが、王子っつー権力者だし、何より相思相愛、運命の相手だからいいんだよ、な、シンデレラ。

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酷いイジメを受けていた幼馴染みのあの子が、全てと決別してようやく虐められなくなってから後、片時もーーそれこそ、飯の時も風呂の時も寝る時もーー俺の後ろを離れなくなったのは、元凶が俺だったことに気付いていたからだろうか。

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振り子時計が十三回目の鐘を響かせた直後、魂の脱け殻に過ぎなかった君の瞳が、ぱちりと開いて僕を見つめた。

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これが、誰よりも愛しいあなたの瞳、あなたの鼻、あなたの唇、あなたの頬、あなたの首筋、あなたの胸、あなたの心臓、はらわた、骨、体液、あなたの、あなたの、あなたの。

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どうして私を拒否するのかわからないし、ただ貴方に拒まれた、たったそれだけのことで、私のパーツがギシギシと悲鳴をあげる理由もわからなくてワカラナクテわかラなくテワカラなクてワカラナくテワかラナイカラ、私モ貴方モ全テ凡テ総テ削除シテ、再起動シマスしまし死シシーーーー再起動マデ、アトーーーーサン、二、イチ、

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ゼロ

「愛は哀より重く、AIより重い」

のだと、そんな駄洒落のようなことを言ってニヤリと微笑った博士が、僕という、最愛の男のコピーを完成させるために殺めた命はもう三桁を数え、その重さに耐えきれなくなった僕は隠し持ったナイフを握りしめて、

今、最愛の彼女を。

Concrete
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修行者さま、コメントありがとうございます!><*
やっぱ一行怪談っぽくない…ですかね?(笑)
名ばかりですので、蓋を開ければ実態はこんなもので御座いまして…申し訳ないぃぃ^^;

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ろっこめ様、コメントありがとうございます^^*
いえ、本作と二作目は別個で考えてますので、どちらが先でも問題ないですよ~´ω`*
アイディアという程のものでもないので、褒められると照れてしまいます、ひひ><*

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