【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

短編2
  • 表示切替
  • 使い方

真意

wallpaper:265

少し短めのお話ですが、読んで頂けると嬉しいです。

その日は、日勤帯の仕事がなかなか片付かず、20時頃まで残業していました。

外は既に日が暮れており真っ暗です。

私の勤めていた病院には真ん中に庭(?)のようなスペースがあり、その周りを円柱型のガラスが囲っている10階建ての病院でした。

nextpage

なので、夜になると大きな鏡のようになり姿形が写るのですが、私が廊下を歩いていた時の事です。そのガラスには私の横姿が映っています。何の事はありません。私と同じように廊下を進むガラス鏡の中の私。ふと歩きながら視線をそちらに向けた時、写っていた私の姿が私を追い越して行ってしまいました。

nextpage

「…?…………!?」

nextpage

鏡のようになっている、そのガラスには私が写っていません。

この時の感情をどう表現すれば良いのでしょうか。

驚きというにはあまりに足りないのですが、とにかく私は冷静になろうと、一度目を瞑りました。

目を開けると、そこには私が写っています。

nextpage

…いえ、違います。お婆さんです。見覚えのある、そのお婆さんは何やら口元を動かしています。

目を凝らすも、何を言ってるのかさっぱり分かりませんでした。

その時です、ナースステーションにある心電図モニターの波形が乱れました。

その瞬間、私は全てを悟ったのです。

波形の乱れたモニターは、まさに先程見たお婆さんのものでした。

慌てて病室へ駆け込みます。

nextpage

「〇〇さん!大丈夫ですか!?」

ガラスに写ったあの時のように、酸素マスクをつけたまま何かを口パクで訴えています。

私は、応援を呼びながらその声に耳をそばたてました。

『ありがとうね。』

その言葉を最期に、お婆さんの意識は無くなり、暫くしてお亡くなりになりました。

nextpage

あの時、ガラスに写ったお婆さんはお別れの挨拶をしに来たのでしょうか。

長く入院生活を送って、看護師である私たちに感謝の意を込めて。

ですが、ガラスに写ったお婆さんの口の動かし方はどう考えても、私が病室で実際に聞いた

『ありがとうね。』では無かったのです。

nextpage

あの口の動かし方、あの表情から推測するに、私はお婆さんがこう言ったのではないかと思っています。

『死にたくない。』

Concrete
コメント怖い
15
38
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信

智花様

コメントありがとうございます。

病院に勤めていると、怖い体験も多いですが、
こういった悲しい体験も等しく多いですね…

返信

マコ様

コメントありがとうございます!

久々の心霊ものでした。
お楽しみ頂けましたでしょうか…?
少し切なさというか…やるせなさが残る体験でしたね。
人間等しく、「死」というものは訪れますが、回避できないもの故に、こういう訴えを私がキャッチできたとしても、何も出来ない不甲斐なさというのは、拭いきれません…

返信

月舟様

霊が全員恐ろしいもの。とは、限らないですね…
ですが、少なからず目の前に現れると、良いものでも悪いものでも驚きはします。(笑)

返信

ロビン様

コメントありがとうございます。
ロビン様のような大御所様が、私の作品を見て下さっていると実感すると、執筆にも気合が入りますね…おおう…

老婆…はっ…!じゃないですよ!!(笑)

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

むう様

鏡って不思議ですよね…
前にもどこかで言ったような気がするんですが、鏡って写ったものが100%ホントでは無いらしいです。鏡に手を触れると屈折率で少しずれるじゃないですか?だから、鏡に映ったモノは100%正確・本物ではない。

なかなか興味深いですよね…

返信
表示
ネタバレ注意
返信

ゆかちん様

コメントありがとうございます!!
私も何ともやるせない気持ちになりました。
【満足のいく人生の終わり】って難しいんですね…
「悔いが無い。」と言っていた方でも、
死の間際になると本能的に「生きたい。」と思う…
考えさせられる体験でした。

返信

こめちゃん

それは怖い。普通に怖い。
創作で話書けるレベルで怖い。ヤバい。

女神!?
いやいや…どんでもねぇですだ…
普通に患者さんと喧嘩したり、自由な看護師されてもらってますよ。(笑)

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信