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第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 番外編 運命の入れ替わり

中編5
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第三回リレー怪談 鬼灯の巫女 番外編 運命の入れ替わり

「ハッピーライフ、ハッピーホーム、卵、売る♪♪」

港町を歩いていると屋台の開店準備をしていると思われる女性が楽しげに歌を口ずさんでいた。

どこかで聞いたことのあるメロディーだ。

その屋台の店主と思われる女性は俺が店を覗いているのに気が付くとびくっと驚いたように体を震わせた。

「アンタ、この店が見えるのかい!」

顔を真っ赤にしながら、客に店が見えるのかとはどういう接客だとは思ったが、女は俺の存在がなかったかのように店の奥に行ってゆっくりと座った。

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「おや、お兄さんはこの店が見えるんだね」

どうやら俺は見てはいけないものを見てしまったらしい。

変に絡まれないうちに退散しようとすると、女は声をかけてきた。

「アンタ、死相が見えるよ」

俺はその言葉に足を止めた。

「どういう意味だよ!」

ついさっき絡まないようにしようと思ったのに聞き返してしまった。

「そのままの意味だよ、アンタには死の雰囲気がまとわりついている。

ちょうどいい、この卵を持っていきな、身代わりになってくれるから」

身代わりとは御守りとでもいうのだろうか。

よく見ると、その露店にはいろいろな卵が並んでいたが、女はそのうちの一つを手に取って俺に差し出してきた。

「なんだよ、何かと思えば新手の押し売りかよ」

「御代はいらないよ、ただしタダではないけどね?」

「さっき卵、売るって歌ってなかったっけ?」

「タダじゃないからいいんだよ!」

よっぽど彼女の逆鱗に触れてしまったのか、その恐ろしい剣幕に俺は逃げるように店から退散した。

やりとりの途中でこの女は渚の話に出てきた占い師ではないかと思ったが、確認することはできなかった。

くだんの身代わりの卵は握りしめたままだった。

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俺は卵売りの女が予言したように首をはねられて死んだ、というのが最後の記憶だったが、次に意識が覚醒すると首は繋がっていた。

場所は同じ島の神社だったが、辺りは夜の闇に包まれ、なぜか服は着ていなかった。

もしやと思い周りを探すとポケットに入れていた御守りの卵が傍らに落ちていた。

見ると卵には俺の切り離された生首と胴体が浮かび上がっていた。

文字通り身代わりになってくれたのかもしれない。

そのとき俺は神社に灯りがついているのに気が付いた。

まだ頭の中がぐらぐらしていたが、ともかく神社の方に歩き出した。

神社の中に人影が見える。

何か舞のようなものを踊っているようだ。

その光景はまるであの世に行きついたかのような妖艶なものだった。

巫女装束をまとった少女が灯りの中で舞を踊っているのだが、その巫女装束が通常のものとは全く異なり布の面積が異常に小さいのだ。

そのため、まさしく飛び出るという表現がふさわしいほど、少女の大きな双丘が何度も弾んでいる。

あまりの衝撃に身体が固まって動けずにいると、巫女と思われる少女がこちらに気が付いた。

少女はまさしく化けて出た死人を見るような驚いた声をあげた。

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「えっ、う、うそ、潮の、亡霊!?」

「えっ、おまえ、七月か!」

少し髪が長くなっているような気がしたが、少女は北嶋姉妹の双子の姉、七月だった。

「おまえ、何やってるんだ、そんなエロい格好して!」

「えっ、ち、ちがうの、これは男神である海神様に巫女の舞を捧げているの」

七月は恥ずかしそうに俯いて顔をそむけた。

「そ、それより、潮生きてるの、それとも亡霊なの、そ、それになんで裸なの?」

七月の消え入りそうな呟きに俺は自分の状況を思い出して両手で股間を隠した。

七月はとにかく着替えを用意するから中に来てと促した。

俺はともかく言われるままに神社の中に付いていった。

奥で七月が俺の着替えになりそうなものを探してくれているときに今の現状のさわりだけは知ることができた。

北嶋姉妹が神社の巫女になったこと、町で起こった事件、俺自身の葬式、そして俺が首をはねられてからかなりの時間が経過していること。

そして、俺が生き返った要因であると思われる卵を七月に見てもらった。

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「潮の言う通り、たぶんこれが身代わりになってくれたんだと思う。

すごい秘められた力を感じるから。

でも、死の運命を入れ替えるなんて、逆に反動が凄まじいと思う」

七月はこの卵はすぐにでも元の卵屋に返した方がいいと真剣な表情で話した。

七月は俺の着替えの着物を持って、俺がいなくなった後のことを詳しく説明しようとした。

しかし、俺はその時そんなことはどうでもよかった。

もう一度、生きて七月に会えたことが嬉しかった。

元々、この島に来た目的の一つは七月に告白するためだった。

それが果たせずに死ぬところだった俺は感極まって七月を強く抱きしめた。

「えっ、潮?」

「七月、また、会えて、嬉しいよ、もう離さない」

七月の身に着けていたみだらな巫女装束も後押しとなって俺はそのまま七月を押し倒した。

彼女は全く抵抗することはなかった。

「うん、私も潮のこと好きだよ、だからいいよ」

七月は優しく微笑んで俺を受け入れてくれた。

その夜、俺達二人は激しく愛し合った。

初めて同士だったが、そんなことは些細なことでしかなく獣のようにお互いを求め続けた。

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夜明け前、ようやく精も根も尽き果てた俺に対して、七月はあらためて島と町で起こったことを詳しく話し始めた。

力を使い果たした俺は彼女の話にただ聞き入っていた。

そして、夜が明ける頃になって、彼女の話は一段落した。

「そうか、渚も・・・想像以上にひどいな」

彼女も哀しそうに頷いた。

「なんか、相変わらず東野さんだけは上手いことやってるような気がするな」

「そ、そんなことないよ、彼は事態がうまく収まるように一生懸命だったのよ」

「まあ、もちろんそうだとはおもうけど」

「それと最後に私自身のことだけど」

「ああ、神社の巫女になったんだろ、それはさっきも聞いたよ」

「ううん、それだけじゃないの、実はね、潮がびっくりすることがまだ一つあるの」

「えっ、なんだよ、今回の事件以上に驚くことなんてもうないだろ」

「ううん、たぶん驚くと思うよ」

「じゃ、じゃあ言ってみろよ、ぜったい驚かないよ」

もったいぶって話す彼女もかわいいなあと思いながら、俺は七月の告白をじっと待った。

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「実はね、私、七月じゃなくて、八月だよ」

「は??」

一瞬、間をおいて、俺は何からかってんだよと言ったが、彼女は再び裸で抱きつき、耳元で囁いてきた。

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「だって、好きだった人が生き返って再会するなんて奇跡が起こったのに、潮がなっちゃんと間違えるんだもん、意地悪もしたくなっちゃうよ」

その言葉が聞こえると、彼女の右手にすさまじい力が入るのが分かった。

「ちょっと待って、もげる、もげる!」

死を覚悟するような激痛、その握力は間違いなく八月だった。

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「初めてだったのに、あんなに激しくして、赤ちゃんできちゃったかも。

もちろん責任取ってくれるよね」

震える俺の表情を覗き込みながら、彼女は微笑んでいた。

俺はかくかくと壊れた機械のように首を縦に振るしかできなかった。

俺は悟った、自分の運命の相手は七月ではなく八月に入れ替わったんだと。

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