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皆さまお馴染み、私のバンドメンバーが体験したお話です。
今日の主役になるのは、べース担当のリョウ。
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私たちのようなヴィジュアル系バンドには、なかなかに病んでいるファンが多い。ということは、今までのお話の中でも皆さまご存知かと思います。リョウが体験した話も、そんな粘着質なファンから届いた、一冊の日記帳から始まりました。
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とある日___
「なあ、雪。ちょっと今日時間ある?」
「時間?お前にくれてやる時間は無い。」
「ちゃうねん。今そんなん求めてないねん。あるんやろ?」
「この後は、家帰ってゴロゴロしてゴロゴロするから時間は無い。」
「頼むって。甘いもん買ったるけ。」
「お、急に暇になったわ。」
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そんな会話の後、私はリョウの住むマンションへ向かう事になりました。
彼は、こんな風でもお金持ちのお坊っちゃん。
3LDKのマンションは親に買って貰ったものらしく、そこで一人暮らしをしていました。
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「邪魔します。」
「お。をつけろ。お。を。」
「うるさいな、はよ甘いもん買えや。何で帰りにコンビニ寄らんねん。」
「待っとけって。」
そう言って彼が冷蔵庫から出したのは苺のショートケーキ。
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「ひゃああああああああふうううううう!!!!!」
歓喜に震えながら私はそのケーキを貪り食いました。
そんな事をしていると、リョウが一冊のノートを持って戻ってきました。
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「何それ。ノート?えらい可愛いピンクの。そういう趣味?キモ。死んで。」
「違うわ。アホか。お前アホやろ。」
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どうやらそのノートは日記帳のようでした。
リョウの今回の相談はこの日記帳にまつわる事のようです。
パラパラとノートを捲ると、女の子特有の可愛らしい文字で一日一ページ分の日記が書かれていました。
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______。。。
〇月〇日
今日は、(バンド名)のリョウに会いに行った。
相変わらず、可愛い。
本当にリョウに出会えて良かったなあ。
リョウ、大好き。
でも、この気持ちは届かないんだろうなあ。
(以下、略)
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「あらあら。モテるのね。」
「そこちゃうねん。ちょっと読んでいってみ。」
「あ?アンタへの恋文日記読ますために連れて来たんけ?埋めるぞ。」
「ちゃうねんって。」
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溜め息混じりにパラパラと日記を読み進めます。
すると、ある日を境に、日記の内容に不気味さを感じるようになりました。
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5/1
今日は、俺の家にマナミ(仮名)の日記が投函されていた。
これからは、この日記は俺とマナミの日記になる。
たくさん、思い出作ろうな。愛してるよ、マナミ。
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「…は?」
どうやら、マナミという女は、リョウに成りきって日記を書くようになっていたのです。
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「この5/1に、日記がホンマに投函されてた。ってやつ?」
「お察しの通り。」
「…マジでか。」
「俺、この日記読まずに放置しとってんけどや。最近妙なことが起きたりするし、ちょっと気になってよ。読んでみることにしたんや。そしたら、これはバンドメンバーに相談せな。ってなって。」
「成程ね。」
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私は日記の続きを読み始めました。
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______。。。
5/10
今日はライブでマナミの姿を見つけた。
嬉しかった。
俺らはどんな場所に居ても、お互いを見つけられる。
マナミとの出会いは運命。
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5/13
今日はマナミからのラブレターがポストに入っていた。
直接渡せば良いのに。
恥ずかしがり屋で、可愛い奴。
「私の髪の毛…ちょっと恥ずかしいけど…」
なんて、お前の身体の一部なんだから、普通に嬉しいよ。
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5/1に投函された日記には、未来の日記が記されていたのです。
5/10、確かにその日は私たちのライブの日でした。
5/13、リョウが言うには、その日ポストに手紙が入ってたそうです。(中は未確認)
近頃、リョウの周りで起きていた嫌がらせは、どうやらこの日記通りに起こっていたようです。
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7/2
マナミが自殺未遂をした。
不安から、おかしくなったのか。
ごめんな、マナミ。
俺はお前だけを愛してる。だから、もう不安にさせたりしないよ。
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7/2、それは今日の日付でした。
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7/3
これからは、ずっとマナミのそばに居てやることにした。
マナミを守れるのは俺しかいない。
ずっと一緒だ、マナミ。
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7/15
俺の誕生日プレゼントにマナミが欲しい。
マナミは笑顔で了承してくれた。
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「アンタ、来週誕生日やったでなあ。」
「うん。」
「ほな、多分来週がアンタの命日になるなあ。」
「うん。」
「それは嫌よなあ。」
「うん。」
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私たちは、その日記帳を持って警察へ行きました。
事情を全て説明しましたが、当然半信半疑です。
ただ、私たちの担当してくれた刑事さんは、とても頼りになり、その日から自宅付近のパトロール強化。7/15は軽い張り込みをしてくれる約束までしてくれました。
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リョウは、その刑事さんに「あたかも自然な振る舞いをするように。」と言われ、問題の7/15まで自宅で普通の生活を送ることになりました。
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ここからは、刑事さんが話してくれた内容になります。
7/15の夜、一人の女性が逮捕されました。
マンションの前でウロウロと不審な動きをしており、職務質問をすると、カバンの中から刃物が出て来たそうです。彼女は全ての容疑を認めたの事でした。
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リョウは事情聴取の為に警察所へ呼ばれ、そこで女の顔を確認したそうですが、全く知らない女だったと言っていました。
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リョウはその後すぐに引っ越しをしました。
次の住まいは完全オートロックの重警備なマンションです。
皆さまも、見知らぬ日記がポストに投函されていた際は、お気を付けください。
作者雪-2
ファンシリーズも4作品目となりました。
過去の作品は以下よりお読みいただけます。
ヒトコワ系なので、気分を害される可能性もあります。
十分にお気を付けて閲覧下さいませ。
※マナミというのは仮名です。不快に思わせてしまった方がいらっしゃいましたらこの場を借りて謝罪致します。
↓ファンシリーズ過去作品↓
【ファン】怖33
http://kowabana.jp/stories/28230
【ファン②】怖24
http://kowabana.jp/stories/28299
【ファン③】怖30
http://kowabana.jp/stories/28468
↓4月投稿高評価作品↓
【沖縄】怖34
http://kowabana.jp/stories/28568
【叫び声】怖37
http://kowabana.jp/stories/28591
↓1月に高評価を頂けた処女作品↓
【やってしまった】怖40
http://kowabana.jp/stories/27969
↓2月月間ランキング3位受理作品↓
【赤ちゃん】 怖40
http://kowabana.jp/stories/28114
↓3月月間ランキング3位受理作品↓
【洞窟探検】 怖39
http://kowabana.jp/stories/28340
お暇の際に、お目汚しになればと思います。
※駄文失礼しました。